きょうのことば 第18集 / The Words / 2009.01更新 | |||
きょうのことば 第18集 2008 The Words |
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ことばの使い方ひとつで、ものごとがガラリと変わる。みんなはそう言っているけど、裏を返せばこんな意味なんじゃない? キレイごとは、なし。時事世相に「忍び足、のち急襲」でせまっていきたい。
▲最新の「きょうのことば」
20081027号
心霊写真は心理写真
◆子供のころ、本屋で立ち読みした「恐怖の心霊写真集」なるものが怖くて仕方がなかった。
◆心霊写真はなぜ怖いのか?
1.カラーをモノクロに変換する
◆これらはどのような作業をしているのか、と言えば、「元画像に含まれる情報量を減らし、元画像にはない情報をあと付けする作業、そして画像を見る側の想像力を引き起こさせる作業」なのである。
◆カラーのいわゆる心霊写真はさして怖くないがモノクロは怖い。これは情報量が少ないからだ。 ◆情報が少ないと人は不安になる。その不安に対して解釈を加えることで解消と理解を試みようとするのは、太古の昔からヒトが行ってきたことだ。こうしてヒトの心理に働き掛け、ヒトの心理で鑑賞させる(する)のが心霊写真、もとい心理写真である。 ◆さて疑問。高画素デジカメやハイヴィョン・ヴィデオムーヴィーの時代に心霊写真・映像は存在しうるであろうか。
20081024号
みらいのにゅーす◆XX県警XX署はYY日、法律で製造・販売が禁止されているこんにゃくゼリーを密造し、インターネット上で販売したとして、XX市内に住む男を蒟蒻を原料とする食品の製造加工および販売の規制等に関する法律(いわゆるこんにゃくゼリー禁止法)違反容疑で逮捕した。 ◆などというニュースが流れたらいやなもんだ。
20080908号
みんなつながっている
◆カビがはえている、国内使用禁止農薬が検出されているなどの理由から、「食用用途で使用しない」という条件で輸入される米があるそうだ。これを事故米穀という。 ◆もっともこのようなクズ米以下の代物を輸入しなければならなくなったのは、二十数年前にテレビニュースで散々聞いた「ガット・ウルグアイラウンド」である。 ◆太平洋戦争に負けた日本は復興のために外貨を稼ぐことを第一義にしてさまざまな工業製品を輸出してきた。安くて壊れない製品を作るために努力したから大成功。プロジェクトXである。
◆戦後復興までの間、日本は外国から入ってくるモノには高い関税をかけて自国の産業を守った。 ◆ところがその牛肉はそこそこうまいけどBSE、オレンジもおいしいけど農薬たっぷり、コメはコシヒカリやらあきたこまちやらひとめぼれに食べ慣れてしまったらとにかくまずい。スーパーの店頭に並べても売れないからどんどん加工用に回されていった。
◆さらに、日本に売ればカネが入ってくると新興国からコメやら大豆やらがたくさん入ってきた。納豆が3パック68円で買えるカラクリを知ることなく「安くていいわぁ〜」なんて声が聞こえるジャスコ店内。 ◆加えて「日本で作ると工賃が高いから」と新興国の激安労働力が加工したギョーザやウナギのかば焼きが入ってきて、こちらも「安くていいわぁ」なんて言って食卓に並べたところで吐き気を催した。 ◆みんなつながっている。きのうの出来事ときょうの出来事が。ZEROになってしまったのは日テレの深夜ニュース。 ◆しかし、爺さん婆さんは怒らなかった。娘や息子は出て行ったけど、道路や橋ができたからすぐに帰って来られると錯覚できた。都市に出た娘や息子も怒らなかった。質の高いクルマに家電、そして円高差益で安くなったブランドアクセサリーで満たされていたから。物欲が満たされていれば文句も減る。物欲を満たす存在には心も身体も許す。
◆許し過ぎちゃったんだよね。みんな優しいから。そして淋しいから。 ◆そろそろ反撃しようかな。え? 次の選挙のことです。
20080904号
あなたとは違うのに違うと言えない
◆福田康夫内閣総理大臣が辞意を表した際の記者会見で言ったことば。
◆記者が首相の言辞に対して「他人事のようだ」と評したところで返ってきたのがこれ。
◆それにしても、日常生活において「あなたとは違うんです」と言いたくなる場面は多々ある。
◆「でも、それ違うよね」、「ないない」、「んなわけねーだろ」と言いたい場面があるのに言えない。これらを一言でも発した瞬間、人と人との間に深い溝ができてしまう。
◆みんなが言いたいのに言えないことを、一国の首相が辞める最後の最後で、公式の記者会見の場において堂々と言った。これがウケた理由ではないかと私は考える。
◆しかし、そろそろ「あなたとは違うんです」と声を大にして言い合った方がいいのではないだろうか。
20080801号
有象無象その3
◆夏の恋ってすぐ冷めませんか? 冷められませんか?(意見には個人差があります) ◆北京オリンピックの開会式で「選手が全員マスクをつけて入場する」という光景が見たかった。
◆エステティックサロンなどの折り込みチラシで見かける「Before,After」の写真。
20080705号
有象無象その2
◆ここ数年、コラムを書く回数が減った。映像や音楽といった表現手段に興味を持ち出したこともある。
◆過去の「イチ押し、ダメ出し」や「きょうのことば」を読み返すと、あの頃の自分はずいぶん怒っていた。
◆携帯電話の電子メールが腹立たしくなる時がある。どうして内容ではなく返信速度にこだわるのか。
◆先日、旅行先でお世話になった人に「はがき」を書いた。久しぶりにペンで手書きしてみた。
◆はがきとケータイつながりで。数年前、ソフトバンクのロゴマークが「〓」という記号に変わった(印刷業界で言うところの「ゲタ」)。プレスリリースでは「坂本竜馬の海援隊旗をイメージした」とあったが、実のところ「パソコンの文字コードで表示できる記号を企業のロゴマークにしたい」という願望があったのではないか。
◆ことわざ。「センタンはフタバよりも芳し」と長い間思い込んでいた知人がいた。アイスキャンディーの比較だと思っていたのか。
20080401号
有象無象その1
◆一部地域の、一部の集落だけの「ならわし」をさも「県全域」でやっているように伝えるテレビ番組。 ◆「けしからん」と潰しをかけた映画が上映中止になると「残念だ」。もちろん後者のコメントは嘘八百である。件の議員は気に入らない言論や表現を封殺したかったはずだ。 ◆「本質的議論」と「その場しのぎの慣例」。道路にしても年金にしても、与党と野党の論点のズレが続いている間に人生はあっという間に過ぎていく。 ◆コイズミの次は「どげんせなあかん」氏。すかさず権力に擦り寄るところはたけし軍団からの世渡り上手。
◆「世界一安全な国」とは「世界一生きにくい国」と誰かが言っていた。
20080202号
ごっつ旨いお弁当大人気の輸入冷凍食品◆食べて中毒になってしまった人には大変失礼だが、ニュースで回収対象の商品名を読み上げる場面を笑わずにはいられなかった。 ◆「ごっつ旨いチャーシュー」だの「お弁当大人気・ミニひれかつ」だのといった真顔で言われたら笑わずにはいられないような名前の商品が今まで店頭に並び、それを何の臆面もなく買っていた自分がいる。 ◆さらにこれら商品がすべて外国で製造されていたことの驚き。家庭用冷凍食品だけでなく、業務用として販売されていたものは、きっと近所の定食屋のメニューにも入っていたのだろう。 ◆食品を加工するところも空洞化されていたのか。中国は脅威だとか何とか言っておきながら、なあんだ、中国におんぶに抱っこではないか。 ◆オーブントースターや電子レンジで加熱するだけというコンビニエンスに対するリスクをあまり考えてこなかったからこそ、ニュースになる。「さっさと輸入禁止しろ」と言うことは簡単だが、弁当や夕食のおかずをすべて自分で作る時間を用意できるか?
20080123号
「夜スペ」で進学塾を起用したわけを考える
1.大学生を対象にアルバイト、またはボランティアで講師を募る ◆東京都杉並区の中学校が大手進学塾の講師を招き、中学生を対象にした補習授業(通称「夜スペ」)を1月26日から行なうという。 ◆成績上位の生徒に発展的な授業を行ない、高校進学に役立てるというアイデアはとても興味深い。ところが「成績上位の生徒に限定しているところが差別的だ」、「一部の進学塾に儲けを取らせるシステムだ」などの批判も多い。 ◆やる前から文句を言っても仕方がない。文句はやってから言えばいい。塾講師の授業には生徒だけではなく、現役の教師も参加すればいい。民間の塾がどのような教え方をしているのか勉強すればいい。 ◆外部の塾講師を学校に入れることで生徒の学力のみならず教師の指導力も上げる。結果として学校のボトムアップを図ることができる。そういう意図がこの施策からは伝わってくる。 ◆ならば同時に地域住民を巻き込んでみたらどうかと考え、さきの1.〜4.を挙げてみた。なにも受験指導に限らなくてもいい。授業の補習や宿題の指導役に地域の人たちの力を借りるという方法もあるはずだ。
◆…と言ってみたところで、他の学校等においてもこうしたアイデアが出てきたはずだが、実現が難しいと判断したのだろう。理由はただ一つ。 ◆…と書いたところで、件の杉並区の中学校は以前から学生アルバイトを起用した補習授業を行っていることを知った。壁はいきなりは崩せないにしても、壁の高さを少しずつ低くすることができるとすれば未来は明るい。 ◆なぜこのような話に言及したかといえば、「防犯」とか「児童生徒の保護」というお題目で自らの既得権益を固守しようとする動きが一方であるからだ。そんなお題目を唱えている間に、児童生徒を性的対象とみなして接するロリータコンプレックス教師が捕まったりする。
20080118号
裁判員制度とメディアの表現
◆来年2009年からいよいよ始まる裁判員制度。 ◆「国民の意見を司法に活かす」目的だが、実際のところ「感情論」や「判官びいき」、そして「場の空気」という日本人の良い面でもあり悪い面が裁判の場に持ち込まれてしまうのが関の山ではないか。こうしたものを排除して、「条文」、「判例」、「事実」を理性的に観察・分析・判断する訓練なしに人の一生を左右する裁判に参加していいものなのかという疑問が残る。 ◆こと発生時の報道を目にして事件を知るわれわれにとって、現在テレビや新聞等が行っている報道に付随した、以下のような表現はハッキリ言って正確な判断を阻害するものである。
1.被害者の葬儀場面を放映する。 ◆上記1.〜9.の材料でどんなストーリーが作れるか考えてみよう。おそらく考えられるストーリーに大きな差異はないだろう(下記の内容は実際の事件とは一切関係ありません)。
1.××容疑者に殺された○○さんの告別式がしめやかに営まれています。 ◆こうした表現を何気なく見ているが、ここには明らかに送り手の主観が入っている。上記の表現というのは「心象風景の表現」であり、「報道」とは一線を画するものである。しかもありきたりのベタ過ぎる枯れた「心象表現」である。これらの表現は明らかに「被害者はかわいそう、被疑者は極悪」という固定観念をより強調させた形態で植え付けることを目的として施されるものだ。こうした表現を慎めというとやれ報道規制だ、表現の自由の侵害だとかメディア側は言うが、そもそもこんなものは「報道」ではないのだから文句を付ける場所がズレている。
◆メディアの読み取り能力とは言っても、大抵はこうした表現に惑わされてしまうのである。 |
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