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きょうのことば 第2集 1999 The Words

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巷の風景

 ことばの使い方ひとつで、ものごとがガラリと変わる。みんなはそう言っているけど、裏を返せばこんな意味なんじゃない? キレイごとは、なし。時事世相に「忍び足、のち急襲」でせまっていきたい。
 (「きょうのことば」は、「STIJNews」のワンコーナーです。ここでは過去のバックナンバーを収録しています。)

19991203号
現代広告考
ステッカー4段変格活用

 JR京浜東北線や総武緩行線に209系という電車が走っているが、運転席背後の脱出扉上方にこんなステッカーが貼ってあった。

この電車は、従来の半分以下の電力で走っています。

「エコトレイン」キャンペーンを12月から開始し、車両全体に装飾を加えた列車も走らせるなどで話題になっているが、そればかりではない。この車両にはまだまだ隠された秘密がある。ということでこんなステッカーを作ってみたらどうだろうか。

この電車は、従来の半分以下の費用で作っています。

見るからに薄そうなステンレス板。吊革の手すりがミシミシ音を立てる。実は3分の1という話もある。

この電車は、従来の半分以下の強度で走っています。

よく考えてみると怖い話。「踏切事故ゼロ運動」を盛んに展開するのは、従来車両よりも突したときの破損規模が大きいからなのだろうか。

この電車は、従来の半分以下の寿命で走っています。

とにかく何でも半分以下。しかし、「いいものを長く使う」というエコロジーの考え方もあることは知っておきたい。それにしても、雨の時の空転(スリップ)で乗り心地が非常に悪くなるのはどうにかしてほしい。

19991202号
現代広告考
センスが開業当時

モノレール広告その1 羽田空港を利用する方にはおなじみの東京モノレールが、帰省シーズンを前に京浜東北線など首都圏のjr線に車内広告を出している。が、しげしげ眺めていると得も言われぬ広告センスの古さを感じる。

 「一足お先に羽田空港へ」の字余りなキャッチコピー、ランニング姿の女性と6両編成のモノレールを並走させているストレートさ。しかもモデルの女性が1960年〜70年代的顔つきで、束の間のタイムトリップに見る者をいざなう。周辺コメント文のクドさもレトロだ。

便利さなり。 極めつけはこのコメント文。
「まさに1日中時刻表無用の便利さなり。」
他のコピーが現代文法を使っているのに、なぜこの一行だけ古典文法なのかと見る者に疑問を抱かせる。一方的な説得力はあるかもしれないが。

 京浜急行も「エアポート快特」を走らせるなど羽田空港アクセスの競争が始まっているが、まさか断定の助動詞「なり」でノックダウンされるとはさすがの京浜急行電鉄も予測だにしなかったと思う。

 そんなモノレールの広告に不思議な魅力を感じる今日この頃。

19991201号
現代広告考
時刻表に場違いな、あの論客の

 奥羽本線へ直通する山形新幹線が新庄まで開通。新ダイヤを確認するために「jr時刻表」を購入した。最速電車と最遅電車に約30分の所要時間差が生じているのがやけに気になりつつページをめくっていたところ、裏表紙見返しに何とも場違いな「日本の論点2000」の広告が。

 石原慎太郎、田原総一朗、佐高信、江川招子、河上亮一、西部邁…これでもかと思うほど強烈な面子のオンパレード。楽しい旅のスケジューリングをしているときにあのツラは見たくはない。移動中の車内でこのページに遭遇したら、不覚にも乗り物酔いを起こしそうだ。

 イデオロギーが介在することのない「時刻表」という雑誌に、このような広告を載せるのは場違いではないか?

19991102号
現代飲料考・番外編
そのビール、シャンプーの匂いがしませんか?

 異業種の数社がそれぞれの製品を同じブランド名で売るwillプロジェクト。20代前半の年齢層をターゲットにしてさまざまな商品展開をはかっているそうだが、ひとつだけ引っかかるのは、アサヒビール「スムースビアー」のラベル。一見しただけではビールに見えないのだ。ブランドカラーのオレンジ色で統一させるために仕方がないのかもしれないが、あのカラーリングはビールのイメージではない。シャンプーかボディソープのボトルのイメージである。
 「スムースビアー」の中吊り広告を見るたび、「資生堂のシャンプーの広告」を連想してしまい、どこかフローラルな匂いが漂ってくる。

19991201号
芸能界 独断偏見
安室が日本の代表とは、
 世も末です。

 「平成のひめゆり舞台」、沖縄アクターズスクールから本土へ出撃。50数年前の大怨を裁くがごとく、政府首脳の嗜好回路を突発性難聴を起こしそうな高周波ボイスで奇襲。ヲブチ首相はついに沖縄をサミット開催地に決定し、守礼門を2000円札に飾らせた。ところが「高周波ボイス」と併せて「小室式PCMシンセサイザ波動」も発射されたため、破壊威力は思った以上に強力で、ヲブチ首相は世界首脳の前で安室奈美恵を「日本の代表として」歌ってほしいと要請する発言までしたという。
 しかし、それが実現したとしても、彼女の髪型や歌い方を見て世界首脳たちはこう勘違いするに違いない。
「まだ沖縄はアメリカから返還されていなかったのか…」
 サミット開催は20世紀最後の年、2000年。こういう話はヲブチ流「世も末」の駄洒落だけにしてほしい。

 余談だが、「君が代」の歌詞を往年の「don't wanna cry」のメロディで歌うと、結構ハマる。

 ♪どーこへーでーもー つづくーみちーがあるー いーつのーひにかー
 ♪きーみがーよーはー ちよにーーやーちよにー さーざれーいしのー

難しいのは「いわおとなりてこけのむすまで」をどう歌うか…。

19991101号
芸能界 独断偏見
宇多田よ、お前もか

 新曲発売時にリリースされたプロモーションビデオでは、髪の毛を染色し、眉毛を切削した姿を見せた、NY産「親の七ヒカル」。日本で紹介されて間もなくは、日本人離れした歌声と派手すぎないファッションで独自性と「実力」を主張していたのだが、なぜ、下品きわまりない「モ◯娘。」のような恰好になってしまったのか。
 ファッションも芸能人の個性を主張するはずなのに、どこもかしこも「jis規格の工業製品」のように同じ髪色、眉型をするのだろうか? しかも本人の意思なのだろうか。非常に残念である。

19991000号
音楽業界・不思議法則
ゴダイゴは7年周期でヒットする

 「銀河鉄道999」や「ビューティフルネーム」で知られるゴダイゴ。そのヒット年代を見てみると1978年、1985年、1992年、1999年とピッタリ7年の間隔をあけている。これほど定期的周期で注目されるのは非常に珍しく、それだけ根強い支持もあるし、音楽的にも優れているということかもしれない。
「音楽時計」の異名もあるらしい。

19990901号
巷の風景
やはり神奈川県警。

とある番組表  特番シーズンになると必ず放送される「警察特集」。事故を防ぐため、事件を防ぐため、市民の安全と治安を守るため、日夜弛みなく職務を遂行している警察官がいる一方で、さまざまな不祥事もまた新聞やテレビをにぎわせる。

 そこで、こんな「警察特集」があってもいいと思うのだが、たぶん放送はおろか、一切の取材協力を拒否されることは必至かもしれない。けれども視聴率はきっと稼げるにちがいない。

19990900号
巷の風景
 プチ家出? 
  プチだかポチだか知らんけど家出は家出だ!
   父さんは許さないからな。

 某新聞の家庭欄はたまに変な特集を組むが、通勤電車の車内で読んでいて非常に腹が立ってくる。その一つがこれ。
 ちなみにこの声、新橋駅前で収集しました。

19990320号
巷の風景
子供を産みたくても産めない、その理由(わけ)。

 栃木県の知事さんが新年度のあいさつでこうお話したそうだ。
 「将来の財政難を救うには、1世帯3人は子供を作るべきだ」と。
 「産めよ殖やせよ」政策を思わせる内容のお話だ。
 確かに子供の数は年々少ないし、それが高齢者を支える上での大きな障害となることも理解できる。

 でも、「いま産んだ子供を本当に育てられるのか」「いま産んだ子供が本当に幸せに生きられるのか」と考えると躊躇してしまう。

 いじめ、学級崩壊、雇用不安定、新・競争社会…
 これから生まれる子供にはあまりにも重い現世である。

19990301号
巷の風景
かくして臓器は散ってゆく。

 日本初の脳死患者からの臓器移植が始まった。
 テレビ画面から刻々と伝えられる移植のニュースを見た。

 肝臓や腎臓の入ったクーラーボックスが新幹線に乗せられている。
  不思議な話だ。死んでも内臓だけは長い旅をするんだ。
 臓器の提供先が丁寧に地図で示されている。
  不思議な話だ。死んでも内臓だけは自分の住む町を離れるんだ。

 一個体から離れ、地上や上空を飛び交っていくあらゆる箇所の臓器。
 死んでまで身ぐるみ、いや、内臓まで剥がされるという、その事実。
 「ヒト」が「モノ」と化す過程をことごとく見せつけられた。

 しかし、臓器を待っている人がいる。これで生きられる人がいる。
 ふたたび肉体に戻った臓器は果たして「モノ」なのだろうか?

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