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きょうのことば 第16集 2006下半期 The Words

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 ことばの使い方ひとつで、ものごとがガラリと変わる。みんなはそう言っているけど、裏を返せばこんな意味なんじゃない? キレイごとは、なし。時事世相に「忍び足、のち急襲」でせまっていきたい。
 (「きょうのことば」は、「STIJNews」のワンコーナーです。ここでは過去のバックナンバーを収録しています。)

20061114号-2

手紙ってドキドキする?

◆伊吹文部科学大臣あてにつぎつぎ届く自殺予告の手紙。
内容はどうであれ、自殺予告を手紙でよこすというのがなんとも興味深い

◆携帯電話のメール機能、パソコンやネットを使い込んでいる10代の少年少女。
どうして自殺予告は手紙なのか? どうして郵便なのか? なぜ定形外&切手貼付で送るのか? なぜ手書きなのか?

◆確かに電子メールは調べ尽くせば送信した個人が特定されてしまう。省庁の公開アドレスには有象無象の電子メールが届くから埋もれてしまう。定形郵便で出すと見えない符号が封筒に印刷されてしまい、消印がなくともどこの郵便局で処理されたかが一発で分かってしまう。民間運送会社のメール便を個人で使うにはコンビニまで出向かなければならず、そこで顔が割れてしまう。

◆そこで旧来の通信手段の穴を突いたわけか。
マスメディアの報道によれば、近頃の小中高生のいじめは携帯電話やパソコンのメール機能を使って「陰口」を言うそうだ。個人のブログや掲示板に嫌がらせの書き込みをしたり、悪質なトラックバックを飛ばす「ネットいじめ」も横行しているという。

◆教室で居場所を失い、逃げ道だったネットも居場所を失った先に向かったのが近所の赤いポストだった…なんとも悲しい話だ。

◆しかし結果として自殺予告を送った彼・彼女らのことばは広く伝わることになった。
彼・彼女らは想像以上にメディアの選び方と使い方を知っていると感心するのだが、自ら生命を絶とうと切羽詰っている精神状態で、冷静にメディアの選択が可能なのだろうか。石原都知事ではないが疑問を覚える箇所も多々ある。

◆ぜひとも文部科学大臣さんには返信を自筆で書いてほしい。そしてポストに投函してほしい。「相談する場所はたくさんあるのだから」というコメントは逃げだ。かりに投函しても宛先不明で戻ってきてしまうだろうが、これくらいのパフォーマンスは必要ではないのか。愉快犯的だと斬らずに少年少女へのメッセージとして活用してしまうのである。

20061114号

コイズミ内閣の国民洗脳・やらせ田舎ミーティング

◆私は過去に2回のタウンミーティングに参加したことがある。
年金問題と構造改革に関する内容だった。2003年の話である。

マスメディアのフィルターを介さず、政府の考え方を生で聞けるチャンスと思い参加したが、あの内容もすべてシナリオ通りだったのだろうか。例の竹中・前総務大臣がしきりにリップサービスをしていた場面に違和感を覚えたが、自分の身体はウソをつけなかったということか。

◆教育改革に関するタウンミーティングでは「やらせ」が発覚してしまったが、当の政府側は「詰めが甘かったな」と思っているに違いない。たまたまバレてしまっただけで、過去に全国各地で開かれたタウンミーティングの中には「やらせ」を含んだものが少なからずあったにちがいない。

◆やはり前内閣のキモだった「You say 民営化」に関するタウンミーティングはかなりクサいと思う。参加して現場をこの目と耳で確認したかった。

◆結局、「内閣の国民対話」などと言ったところで、腹の中はそんな気は微塵もないのだ。冒頭に書いた「政府の考え方を生で聞けるチャンス」を得たときは、自分の頭のフィルターを普段の倍以上に稼動させなければならないと悟った。

20061103号

上げ膳据え膳で思考停止〜必修漏れ問題〜

◆国会で審議されている教育基本法の改セイに拍車をかける目的が見え見え。教育問題を持ち上げるとなぜか被害者意識を増幅させて感情的になる人たちがたくさんわいてくる。

◆さて、近頃話題になっている公立高校の必修教科履修漏れ。
必修教科の履修漏れは今に始まったものではない。進学校では何十年も前から「受験に関係ない教科の授業は聞いているフリをして他の勉強をする」といった「自主的履修漏らし」を行なう生徒が多数いた。地理の授業中に英語の問題集を解いている、という具合に。
俗に「内職」と呼んでいた。

◆ここで注目したいのは「聞いているフリ」という部分。悪いと分かっていて、発覚すれば教師からの叱責は免れない。発覚しないようにワルヂエを働かせるのが生徒のアタマの見せ所だ。こういう連中というのは授業を聞いていないけれどもペーパーテストは落第点にならない程度に点数を取ってしまう。
こういう見方もできる。「授業を聞いていなくてもその分の勉強は自分であとでまとめてやっている」と。自己管理できる生徒はそれくらいのことをやるし、そういう生徒はおのずと入試を突破している。

◆ところが学校側が「公認」してしまうと生徒たちもワルヂエを発揮する場所がなくなる。
合格率を上げようと学校側が躍起になるあまり、お膳立てが過ぎてしまったのが今回の問題だ。

◆お膳立てが過ぎる学校というのは、生徒に「知識」を詰め込ませるのは得意でも、「知恵」を育ませるのは苦手なように思える。「知恵」の中には先述の「ワルヂエ」も含まれるが、ワルヂエを含めて「知恵」を育む余地を与えていない。上げ膳据え膳の受験対策によって生徒をがんじがらめに縛りつけて思考停止に導いているのである。

◆必修教科を削らなければならないほど大学の入試問題は難しくなったのか?
否。センター試験も国立大学の二次試験も学習指導要領の範囲を逸脱して出題されることはない。高校の授業をしっかり履修していれば入試問題は解けるようにできている。

◆ただ、近頃の入試問題は、思考力や総合的学力を問うと称して英語の問題の中に政治経済や物理・化学、倫理などの履修項目が盛り込まれていたりする。
大学の入試問題に限らない。高卒程度の公務員試験においても全教科からまんべんなく出題される。

◆入試と関係ない科目にこそ入試突破のカギが潜んでいる。さらに入試を突破し、大学の講義や演習が始まったとき、これらの教科の知識、そしてあらゆる教科を履修することによって生まれた「知恵」が必要となる。

20060927号

J民党の考える「弱者に根ざした政治」

被害者意識を抱かせ、それを増幅させる。これに尽きる。

◆この場合、「誰を加害者にするか」が問題になるが、〜被害者意識を抱かせ、それを増幅させる〜主体、すなわち「仕掛け人」がターゲットとならないようあらゆる情報を氾濫させ、細分化した「加害者」をニーズに合わせて選択させる必要がある。

◆あとはもぐら叩きゲームの要領で、細分化した「加害者」を叩き潰していく。もぐら叩きゲームのスコアは支持率となって明快に現れる。

◆しかしハンマーで叩いても、もぐら叩きゲームのもぐらは次々に出てきてキリがない。

◆本来叩かれるべきものは、「もぐら叩きゲーム」の装置そのものだが、それに気づいていない。

20060901号

「再チャレンジ」という名の二段階選別

◆某政党の総裁選挙がスタートした。ほとんど出来レースに近い感がある。

◆ところで、最有力候補が掲げる「再チャレンジ」ということば。
よくもまあ、次から次へとわれわれを惑わせる言葉が浮かぶものである。

◆「多様な機会と再挑戦の機会を増やす仕組み」とは聞こえはいいが、結局のところ「機会を与える分、要らないものはどんどん切り捨てていく」ことを推進することに過ぎない。

◆いわゆる「小泉改革」で「上」と「下」の選別を行ない、次の「再チャレンジ」で「上」、「下」のそれぞれで選別を行なう。ここで気をつけたいのは、「小泉改革」の段階で「下」に位置づけられた場合、「再チャレンジ」で「上」に行くことはできないということ。
さらに「上」が「再チャレンジ」によって「下」に行くことはないということ。
このカラクリ、分かるだろうか。

〜第一段階〜
1 上
----------越えられない壁
2 下
   ↓
〜第二段階〜
1 上の上
  ↓↑
2 上の下
----------越えられない壁
3 下の上
  ↓↑
4 下の下

◆行政サイドは「再チャレンジ」に必要な「機会」を設けるためにさまざまな施策を検討中だが、「機会」にアクセスできる者とできない者に分けられていることに気づかなければならない。

◆今後提示される「機会」の中身を見れば分かるかもしれない。さまざまな「機会」に付帯してさまざまな「条件」があることを。
さらに言えば、今までもさまざまな「機会」に対して「条件」を付けてきたわけで、新しいことをやるように見せかけて根本的には何も変わってはいないのだ。

◆さて、拙文で言うところの「上」と「下」とは何か。所得の多寡を連想してしまいそうだが、それだけではない。これらの改革は一人ひとりの「意識レベル」に格差を生ませているのである。これは経済格差よりも重大な問題だ。

◆「選別」の果てに他者を、世を憎むしか捌け口を見出せなくなった人々が増えている。彼らが憎悪を蓄積させた末に暴発しても「心の闇」などと実体のないことばを用いて葬り去る。ここには所得の多寡は関係ない。

◆またひとつ、「幸せ」が遠くなった。
それを知らずに「安倍ちゃんガンバレ」などとテレビ画面に向かってつぶやく零細飲食店の店主…。そんな哀しい風景を先日目にした。

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