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未完の遠野紀行−1991[その1]
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 これは、1991年春に遠野方面を旅した際の出来事を帰着後記録したものである。幾分10年近く前の記録なので、現在の様子と異なることや、文章に多少のミスがある部分については加筆訂正、もしくは付記にて補足を加えた。

はじめに

 1990年の春、はじめて岩手県の遠野を訪ねてからというもの、あの地域の風土に魅了され、また今年も出かけてみたくなった。しかし前回と同じ行路では面白味がないので、少し行き方を変えて遠野を目指してみたいと思う。

 前回の遠野行を思い出す。『青春18きっぷ』を使った普通列車コマギレ乗り継ぎをした。大宮からゴルフ列車『フェアウェイ』号に乗り、東北本線を北上した。確か、大宮から遠野まで約10時間かかった覚えがある。10時間も列車に揺られるなかなか贅沢な旅だった。

 思い出に浸っているうち、やはりその「贅沢」を今年もまた味わってみたくなった。結局、今回も『青春18きっぷ』を使っての普通列車コマギレ乗り継ぎにすることにしたのだが、どこかで夜行列車を入れたいという欲に駆られ, 快速『ムーンライト』号に乗って日本海から太平洋沿岸を奥羽山脈を横切って抜ける大掛かりなコースにしてみることにした。

1・夜行列車の風景
〜ムーンライト号車内にて〜

 1991年3月24日、カラフルな車体の6両編成『ムーンライト』号村上・新井行は新宿駅5番線ホームをゆっくりと離れていく。その電車5両目の端の席で私はリクライニングシートを深く傾けて都会の夜景を眺めていた。

 …なんて書くとさも優雅そうに見えるが、実際私の席の周りには鉄道ファンらしき男性諸氏が座っていて、大型の時刻表をめくっては「明日は米坂線だ」などと話しているかと思えば、デッキに出て自動販売機の缶ジュースを買って飲んでいたり、荷物棚下の読書灯を点けたり消したりしている。私も含めて鉄道ファンは車内設備に対する好奇心が旺盛である。ちなみに車両は上沼垂の「モハ164-65」とある。

 電車は池袋を過ぎてもゆっくりとした速さで貨物線を走っており、山手線の電車に2本ほど抜かれていく。駒込付近にあるトンネルに入ると電車は大きく左に傾き、京浜東北線の上中里付近に出る。赤羽を過ぎ、荒川鉄橋手前にあるポイントを通過すると加速を始める。ふと横の東北本線の線路を眺めると、モーター音に特徴のあるEF62型電気機関車に引かれた団体専用列車が後ろから追ってきた。夜間ということもあり、照明の明るい向こうの車内が何ともはっきりと見える。
 長野から東京ディズニーランドを訪れた帰りと見え、夜行で長野に帰るのであろう。さすがディズニーランド、家族連れの乗客がかなり多く伺える。子供がポテトチップを食べているかと思えば、眠そうな顔をしていたり、こちらの『ムーンライト』号に向かって手を振っていたり…。しばらくこの団体列車と『ムーンライト』号で抜いたり、抜かれたりの競争をする。
 この競争、団体列車が大宮で先行していったが、熊谷で『ムーンライト』に道を譲る結果になった。

 高崎を過ぎて(時刻表上では)止まる駅がないので眠ることとする。とはいってもすぐ眠れるものではないのが夜行列車。シートがいくらリクライニングで読書灯がついていても慣れないと眠れない。何となくウトウトとはするが、列車が時間調整で止まったりするとまた起きてしまう。不思議なことに列車が動いているときは眠れるのだが、止まってしまうと眠れないのだ。

〜〜長岡以遠〜

 早朝4時。長岡に到着前に起きる。目を閉じたのが2時だから、2時間ほどしか眠っていない。頭がボーッとしている。別に長岡で降りるわけではないのに起きたのは、ここで信越本線の新井に行く臨時増結車3両を切り離す光景を見たかったためだ。

 列車は安全のためにいったん開いたドアーを閉めると、切り離し部分に作業員が降りる。列車同士につないであるホースを係員が切り離すと思いっきり『シュー』という音が静まり返った駅構内に響く。
 いよいよ連結器を切り離す。係員が、鉄製の器具を使って連結器の鍵を解く。そのあと、新井行きが少し走って離れる。その間7分。一部始終をビデオカメラに収めている鉄道ファンがいる。

 列車の連結や切り離しを見ているとなぜか興奮するのはなぜだろうか。興奮が醒めないまま車内に戻ると列車は再び走り出す。まだ夜が明けない。また目を閉じる。

 夜が明けた頃、列車は新潟を過ぎて、今までの進行方向と逆に走っている。平野の遠くで赤白の鉄塔についた航空障害灯が点滅している風景を眺めながら新発田、坂町を経ていく。まもなく夜行列車の旅も終わりだ。
「間もなく終点、村上です。連絡列車は…」のアナウンスが始まると、どの客も荷物を手に持ってデッキに向かっている。
 列車は静かに駅に止まった。ドアが勢い良く開いた。降りた客の足はどことなくゆっくりしているが、私はホームを小走りしていた。3分後に発車する、連絡列車に乗り換えるためだ。

ムーンライトリレー号  連絡列車『ムーンライトリレー』号は降りたすぐ隣のホームに止まっていた。ご丁寧にヘッドマークまでついたこの列車(キハ58 761)はディーゼルカー特有のアイドリング音を響かせている。
 快速『ムーンライトリレー』号はエンジンの唸りはあるが、ガクンともせず、静かにホームを離れる。この列車、かなり早い。村上を出ると50分後のあつみ温泉まで止まらない。加速を続けてトンネルに入る。トンネルに入る直前に鳴る警報音が昔のアナログシンセサイザーの音色を連想して心地いい。

 トンネルを出ると進行方向左に日本海が一面に広がる。何て広い海なのかと感動を覚える瞬間だ。岩がところどころ海面に出ていて、絵的な風景が展開する。いわゆる『笹川流れ』と呼ばれる一帯である。

 車中から笹川流れの風景をカメラに収めると、未明の寝不足に列車の心地よい揺れも手伝って目が自然と閉じる。車内が予想以上にすいていたので座席のシートに横たわる。昨日のリクライニングシートもいいが、ボックスシートに横たわるのもなかなか良い。
 ディーゼルエンジンが床下に響く中、再び私は眠りについた。


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