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 お仕着せの「自分探し」〜都立高校で奉仕活動義務化〜

11月15日

 「社会と接し、自分の進路や生き方を見つける機会になれば」

 東京都教育委員会が2007年からすべての都立高校で「奉仕活動」を必修単位にする方針を決めたとの報道を読み、「ついにここまで陥ちたか」と思いました。

 奉仕活動の義務化といえば、4年前にかの「支持率が現行消費税率並み」森前首相が提唱し、教育改革国民会議においても議論されましたが、「自発性がない」という批判が大勢を占め、実現には至らずに終わりました。それもそのはず、前首相は義務として行なう「奉仕」のことを「志願兵」を意味する「ボランティア」と称して世間の失笑を買ってしまい、議論の叩き台に載せるレベルどころではなかったからです。

 都教育委員会の方針では、講義に10時間、実習に25時間、計35時間を1単位とし、実習では児童施設、福祉施設、地域行事の手伝い、公園清掃などを行なう、としています。しかし、これらの活動を10代後半の高校生にどのレベルまで行なわせることができるのか、という疑問が起こります。

 現在、中学校では「体験学習」と称して、企業や公共施設に出向いて仕事の手伝いをしながら社会における個々人の役割について学ぶ、という目的で授業が開かれています。私の仕事場にも中学生が来てモノを左から右に運んでいましたが、「本当にこんなことで仕事の内容がわかってくれるのだろうか」という印象を覚えました。

 結局、わずか数時間程度の「体験」で「仕事」の面白さ、大変さなど分かるわけもなく、むしろ現場は普段の仕事を差し置いて、中学生に「説明」をしなければならない分、平常業務の遂行に支障が出る、という問題を抱えています。また、任せられる仕事の内容も本当に「単純作業」と呼ばれるものでしかありません。
 現場サイドから見れば、中学生は「見学にきたお客さま」という接し方しかできないのです。

 教育計画サイドの期待とは裏腹に、訪問先の現場では生徒の満足が得られる指導ができていないのが現状であり、果たしてここに来て、生徒の興味関心を向上させることができるのだろうかと自責に駆られます。

 現場の受け入れ態勢が満足でないまま制度だけが独り歩きをすると、こうした悲惨な結果になるわけで、都教育委員会には「体験学習」の現状をきちんとフィードバックした上で「奉仕活動」の具体的プランを立ててほしいと望みます。

 しかし、これらの「体験学習」や「奉仕活動」を実施すれば、生徒が規律を身につけ、公徳心や道徳心を養ったり、社会との関わりを持ち、無気力・無職の若者を減らせるというものではありません。

 学校における「義務」というのは、卒業に必要な単位を得ることが最低要件であり、その第一義が根底にある限り、先に述べた目的は二の次になってしまうわけです。すなわち、「単位を取るためにシブシブやる」、「調査書で良く評価されるためにやる」という「自発的」とは縁遠い姿勢で臨まれてしまうのが「学校」というシステムなのです。

 そもそも、社会との関わりや将来の生き方について考える機会を「学校」という空間にすべて用意させてしまうのは果たして適切なのでしょうか。学校が用意しなければ「自分探し」のひとつもできない生徒など、社会は必要としません。

 以前、私の友人はこう言いました。「自分探しは本来絶対に独り旅だ」。
 近頃、誰かが材料を提供しなければ、手本を見せなければ「自分探し」ができない、他者依存的な人間がとても多くなっているように思えて仕方がありません。こうした人間に限って、海外の旅行者が事件に巻き込まれると「自業自得」や「自己責任」を主張しては「そら見たことか」と言い放つ…絶対的な安全圏が保証された空間にいながら…。

 「奉仕活動の義務化」よりも「半年間の自活義務化」の方が、親のスネをかじって、親が用意した部屋でインターネットに明け暮れる中高生には必要なのではないでしょうか。
 この方が都教育委員会の、秋の園遊会にも呼ばれた「元祖・プロのゲーマー」委員が説くところの「チャラチャラしている若造を厳しい環境に置かせて叩きなおしてやる」というお節介極まりない意図に合致するのではないでしょうか。

関連サイト

asahi.com
都立高校「奉仕」必修へ 東京都教委が07年度に
MSN-Mainichi
都立高:奉仕活動を必修科目に 07年度から導入へ

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