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 郵政民営化・あとの祭り、つぎの祭り(1)

郵政民営化・あとの祭り、つぎの祭り(1)

〜はじめに〜

 弊サイトでは、2004年夏より「郵政民営化議論に水を差す」のタイトルで4回にわたり郵政事業民営化の問題点について発言してまいりました。賛成か反対か、という小泉首相とその支持者的な品のない二者択一的意見よりもむしろ、「民営化されたらこれからどうなるのか?」といった未来についてスペースを割いて書いてきたつもりなのですが、まだまだ語り尽くすことができません。

 法案の廃案、解散総選挙、そして再可決と激動の秋はあっという間に通り過ぎていきました。今冬はいよいよ4分社化の具体像と現実が少しずつ見えてきたように感じます。
 それは、新年に届けられた年賀状から始まります。

〜遅れた? 年賀状〜

 1月1日元旦――やはり覗いてしまうのが自宅のポストです。例年なら朝10時頃に郵政カブのエンジン音や自転車のブレーキ音で目を覚まし、配達担当の職員が届けにきた年賀状を片手に冷や酒をちびり…といった過ごし方で新年が始まるわけですが、今年は違いました。

 配達時間が遅い今年は少ない年末に出したのに届かない、こうした感想を持たれた方は多いはずです。いつも元旦に届くよう律儀に差し出してくれる方のハガキが3が日を過ぎて届く、何かおかしい。

 しかし、実際はおかしくないのです。郵便局では年賀の取扱について、

表面に「年賀」と朱書きされ、12月15日から12月28日までに差し出された郵便物を1月1日から配達する

と決められていますから、絶対に元旦に届ける必要もなければ、大晦日に出された年賀ハガキを元旦に届ける必要もありません。もっとも、一昨年の年末に出した年賀ハガキがいつまでも滞留していたとか、年末中に誤って配達されたという事態はどうしようもない大問題ですが、そうでもない限り、多少の遅れは目をつぶる必要があるわけです。

〜すべてはコスト削減優先〜

 さらにいろいろ調べてみたところ、年賀状を運び、届ける側に次のような変化が起きていました。

 1.年賀担当アルバイトの採用減少 → 人件費削減
 2.労働時間の切り詰め → 人件費削減
 3.仕分け体制の変更 → 業務効率化、人件費削減

 尼崎脱線事故から露呈しているJR各社の問題と多少かぶってきますが、さきに挙げたことがらはすべて「業務効率化によるコスト削減」につながっています。

 「手紙は先細りする」の政府判断はそのまま郵政公社の経営陣にも響いてくるのは自明のことで、すでに「先細り後」の体制へシフトするように動いています。
 少数精鋭で作業を進め、仕分け作業を大きな郵便局に集約して行なう、という計画は現行の料金を維持させながら、民間企業の目的である「利益を出す」ために必要なことであると認識していますから、その準備を今から進めて、これらの計画を忠実に従って実行した結果が、今年の年賀状配達に顕われているのです。

 年末年始の一時期のために設備を確保しておく必要はない、元旦以降に配達できれば法律違反ではない、こうした判断が働いているわけです。ところが利用する側は、郵便局の台所事情など知るよしもありませんから、いつも通りに届くと思っています。その温度差をうまく埋められなかったことが必要以上の混乱を生んでいるのかもしれません。

〜今までは…〜

 そうは言っても納得がいかないのも事実。例年はちゃんと元旦にほとんどの年賀状が届けられていたのにどうして今年は、と疑問に思っても仕方がありません。
 違いはどこにあるか。一言でいえば採算度外視をするかしないか、です。

 従来は利潤追求は第一義ではありませんから、「年賀状を元旦に届ける」ことに尽力していました。大量のハガキをさばくため地元の高校生や主婦に呼びかけてたくさんの短期アルバイト職員を募り、人海戦術で仕分けと配達をしていました。これらの風景は年末のニュース映像でよく流されていました。

 毛筆でくずし字になった達筆なハガキも、地名が多少間違って書かれていても、常勤職員が長年の経験から住所を読み取り、大晦日の夕方にポストへ投函されたハガキも深夜遅くまで仕分けをしていました。「郵便局に入って紅白歌合戦をまともに見たことなど、一度もない」という職員もいました。貯金事業や保険事業の役職者も高校生のアルバイトと一緒に作業を手伝っていました。
 まさしく「総力戦」の言葉どおりです。

 一枚の50円(寄附金除く)のハガキを元旦に配達するために力を注いでいた人たちの姿があまり知られることはありません。それが当たり前だと考えていたから、あえて口にしなかったのです。
 送る当たり前、届く当たり前、届ける当たり前、これらの「当たり前」を共有していた時代が「改革」の名のもとに消えていくのでしょうか。

〜これからは〜

 携帯電話のメールで「あけおめ」、これほど味も素っ気もない新年のあいさつは他にありません。郵便による年賀状はたとえ事業体が民間企業化されても消えることはないと考えられます。なぜなら、年賀状は日本の文化として強く根づいているからです。

 新年に届く年賀状を期待する人たちが世代を超えて数多くいるからこそ、「遅い、届かない」ことが大々的に叫ばれるわけですし、一方で印刷業、コンビニ、プリンタ機器メーカーなどの企業が年賀状によって潤うわけです。

 業務効率化、コスト削減を進めながらいかにわれわれ利用者の期待に応えていくか、苦しい立場に立たされるのは必至ですが、両立できる打開策はきっとあるはずです。

 作詞家の永六輔氏が

「年賀状ってのは新年初めて出すあいさつ状のことを言うのだから、なにも年の迫った一番忙しいときに出す必要なんかない。正月を迎えてゆっくり出せばいい」

とラジオで話していたことを思い出しました。スローだのロハスだのと叫ばれている割には、われわれは余裕なく死に急いでいる気がします。

 官に対する過剰な期待、時期がくると一斉に焦り出す空気…
改革すべきは自分自身の「意識」ではないか、と思うこの頃です。

年賀郵便に関するムダ知識

25日までに出しても元旦に届かない年賀状がある
そのほとんどが「正しい住所が書かれていない」、「郵便番号が間違っている」、「宛先の氏名が微妙に違う」ために仕分け作業に遅れが生じるから。特に市町村合併で郵便番号に変更が生じたり、似たような町名が存在する場合、合併等がなくても近隣市町村に似たような町名がある場合は、確認作業のために年賀状が近隣の郵便局間(郵便会社支店間)をぐるぐる還流することがある。これが遅れの主な原因。中には日本各地を行脚してくるはがきもあるという。

・最近は年賀状ソフトで宛名を印字する例が多く、ソフトに登録された住所元データが間違っていると、何年にも渡って繰り返し間違った住所宛てに送ってしまうことがある。今年届いた年賀状の住所と年賀状ソフトの住所を照らし合わせて正しく登録されているか確認してみるのも手。これらの作業は年末の多忙なときにはやりづらいので、新年の一仕事としてやってみるといいかもしれない。

・現場では配達資料や熟練配達員の経験からそれらの郵便物の正しい届け先を割り出す。その確認作業は数分で終わるものから数日かかるものもある。携帯電話やパソコンのメールは、アドレスが一字でも間違えれば「送付できません」というメッセージが返ってくる。これは郵便物でも同じだが、配達現場では「人力アドレス補正機能」が働いて届くことがある。届けられたはがきの住所氏名部分に鉛筆などで薄く書かれていれば、この「人力アドレス補正機能」がかかったとみて間違いはない。ちなみにこれは制度化されたものではなく、あくまで集配担当者の「届けたい」という良心によるもの。過度な期待をすると必ず裏切られる。このアドレス補正作業にはさまざまなドラマが生まれるのでこれをドキュメンタリー映画にしたら結構面白いかもしれないが、いかんせん個人情報なのでフィクションとしてしか取り上げることができないのが辛いところ。

・郵便物は宛先の郵便番号、住所の数字を「区分機」と言われる仕分け機械が読み取って処理される。OCRの元祖である。しかし、数字の記載が不十分だと番号の読み取りが困難となる。特に番地の区切りの「ハイフン(−)」と数字の「1」が判別できずに処理が遅れることが多々ある。漢数字のタテ書きで番地を記載する場合は要注意。

・「区分機」の読み取り性能は年々向上していて、氏名や少々のくせ字まで読み取ることができるが苦手もある。「毛筆のくずし字」、「幼児や小学校低学年の児童が書いた字」、「デザインに凝った字」。ITの進化した時代、「機械でもわかる字を書く」ことが求められているとは皮肉な話だが…。
・名字が変わった場合にも注意。旧姓で送り続けていると場合によっては届かないことがある。

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