最近のイチ押し ダメ出し / No.1051 / 2000.05公開 | |||
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最近のイチ押し ダメ出し 1051 Rh-ABチェーンメール考2000年5月27日 ここ数日前から噂話では聞いていた「Rh-ABチェーンメール」。幸か不幸か筆者もそのメールを受け取りました。もちろん転送はしませんでしたが…。 5月24日頃、ある会社員が、手術を要する同僚の血液が200人に1人の割合でしか保有しないAB型のRh陰性(-)のため、万が一の不足を案じ、献血(供血)のお願いを電子メールで送ったのが事の始まりです。しかし、このメールには以下のようなことが書いてありました。
その結果、届かなくてもいいところまで届くことになってしまいました。 さて、このページをご覧の皆さまの中にも、「Rh-メール」を受け取って友人に転送した、という方がおられるのではないかと思います。確かに希少な血液型のため、「これは大変だ」とばかりに送ってしまったと思います。しかしこれは「チェーンメール」といって、インターネット上で禁止されている行為の一つです。 チェーンメールは同じ内容のメールを多数宛に送信し、受け取った人も同時に多数宛に送信することを求められるメールをいいます。昔流行った「不幸の手紙」とシステム的には同じですが、インターネット上でのエチケット(ネチケット)では「電子メールでは、絶対にチェーン・レターを送ってはいけない」という「暗黙の了解」があります。その理由としてよく言われているのは次の点です。
1.については、インターネット上の情報転送システムの性格からくるものです。特定個人に出すメールでも複数のサーバーを経由しながらデータが送られるため、短時間に必要以上のデータが集中すると、通信経路が混雑して転送速度が下がったり、最悪コンピュータをダウンさせる原因になります。また、コンピュータウィルスの「集団感染」を拡大させる危険もあります。 2.については子どもの頃にやった「伝言ゲーム」と同じです。人の手を介して情報を伝えているうちに、送信者の主観移入や誤認、意図的改ざんなどによって情報が変質してしまう可能性があるからです。ほとんどの場合、話題がどんどん大げさになっていきます。 そしてチェーンメールを禁止している最大の理由が3.です。チェーンメールと称するほとんどは事実と異なる情報を流すために用いられます。これらのメールをさらに転送することは、事実無根のデマや噂を広めることにつながります。共有資源であるインターネット回線を混雑させるだけでなく、いたずらに社会を混乱させることになってしまうのです。デマや噂の怖さは、関東大震災時の殺害事件や、豊川信用金庫取付騒動など過去の歴史が物語ります。 それでは今回のメールの場合は? 正直微妙なところです。デマや噂ではなく、事実という発表があったからです。むしろ「事実」を強調すればするほど、チェーンメールはいつになっても切れない状況を生じてしまう可能性があります。「困った人を助けたい」という善意が絡むためか、「チェーンメールはいけない」と言う人に対しての批判も起きています。 しかし、事実ならばその分冷静な行動が大事じゃないかと考えます。「それは分かっているけど、緊急事態なんだから…」確かにそうです。だからこそ感情を先走りさせず、冷静にそして確実に事態と接する必要があるのです。 ちなみに血液が不足するような緊急事態のとき、安定した血液供給を行なう医療機関ネットワークが機能します。希少な血液型の場合、常に確保できる態勢が整っています。そこでも対応しきれない場合にはじめて、医療機関のネットワークの名をもって、しかるべき場所を用いて広報する手段に出るはずです。このようにシステムが整備されている場面では、そのシステムに任せてしまった方が確実です。 テレビドラマなどで、AB型のRH陰性が足りないといってパニックに陥る場面を何度か見ていると、その切迫感が自然とイメージしてきて、当事者でもないのに緊張感に陥るのですが、そういう時こそ、現実と照らし合わせて考えなければならないと改めて思います。
参考ページ
→福井医科大学の輸血に関するQ&A |
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