My Trip/ 秋の岩手紀行-2 / 01.10開設 | |||||||||||||||||||||||||
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1日だけの小さな旅から、数日がかりの旅まで、日記風に描く旅行記です。 10月21日(日)
一ノ関(8:00)→気仙沼・大船渡→陸前高田(11:25) 自宅を出る際、一ノ関までの宿と旅程は決めたのですが、実は次の日以降の行先を決めていませんでした。内陸に出て温泉に浸かるプランと、三陸沖に出て海を眺めるプランを、時刻表をめくりながらいろいろ考えてみたのですが、迷います。結局、次の天気が晴れて暖かければ海側に、曇りか寒ければ内陸に行こうと考え、それぞれの時間を調べて床についたわけです。 8時に目を覚ますと、からりと晴れ上がっています。針路を東に取ることを決めます。パンとコーヒーの軽い朝食を摂りながら岩手日日新聞をめくると、昨日のコンサートが社会面に写真付きで掲載されており、駅で買い求めることに。ホテルから一ノ関駅の間は歩いて約15分ほど。手持ちの受信機のスイッチを入れると、テレビ岩手の電波をキャッチし、「題名のない音楽会21」の放送をしばし聞き入ります。
この日の出演は木村弓で、竪琴ライアーを鳴らしながら「千と千尋の神隠し」のテーマ曲「いつも何度でも」を唄っています。 一ノ関からは大船渡線。この路線の建設当時に、地元政治家が路線を誘致した関係で線形がうねうねしているのが特徴で、その形から「ドラゴンレール大船渡線」という愛称がついています。車輌にも可愛げなステッカーが貼りつけてあります。 9時25分に出発した盛行き普通列車は、うねうねしたカーブを抜けながら、心地よいジョイント音と力強いエンジン音を響かせて走っていきます。山間部に入ってくると少しずつ木々が橙色に色づいてきます。陸中松川という駅のそばに工場が見えますが、かの宮沢賢治の作品にも出てくる「東北砕石工場」です。駅近くには「石と賢治のミュージアム」の建物が見えます。今度訪れてみようかと思いつつ、列車は先に進みます。 漁港で名高い気仙沼を過ぎ、どこかで途中下車しようと思い、海に近そうな陸前高田を選んで降り立ちます。駅前には世田米行きのJRバスが止まっています。このバスに乗っていけば、遠野へ行くこともできるのか…と考えているうちに、ふと遠野へ足を向けてみたくなりました。それでは、三陸海岸を北上して遠野で泊まる…これで今日のスケジュールは決定です。
いつになく暖かい天気で、海を目の前で眺めてみたいと三陸ルートを選んだからにはやはり海を見てみたい。地図を見ながら海のある方向はどこかと歩いていると、駅前のスポーツ用品店に はじめて訪れる土地を自転車で走るのは、なかなか爽快なものです。少し汗ばみながらも10分ほど転がせると道の駅を通り過ぎ、防波堤に。防波堤をくぐり抜けるトンネルを越えると、一面に広がる輝く海。さっそく自転車から降りて砂浜に向かいます。秋の海を目の前で見るのは、実は生まれて初めてです。太平洋側なのでどことなく明るめです。砂浜では犬を散歩させている人や、自転車に乗った子供たちを見かけます。私も一緒になって砂浜を走り、貝殻を拾い、波打ち際で海に触れたり、砂を握ってみたり、深呼吸したり…そのうちに心が拡がるような気分を感じました。
防砂林の松林の中をさらさらとした砂に足を取られながらも自転車を滑らせ、陸前高田駅前に。自転車を返却しているうちに、次の列車の発車時間が迫ってきます。わずか1時間でしたが、心地よい時間が過ごせました。 陸前高田(12:43)→盛→吉浜→釜石→遠野(18:00) 13時過ぎ、盛に到着。構内には数年前に旅客営業が廃止された岩手開発鉄道の色あせたディーゼルカーやホッパー車が止まっています。ここから釜石までは三陸鉄道線に乗っていくのですが、どうも「1日フリー乗車券が」あるとのことで、一度改札に出て切符を買い求めてみます。価格は1100円、釜石までの片道運賃が1050円なので、プラス50円で乗り降りが自由にできますが、休日だけの発売です。切符を見ると、「三鉄リフレッシュフリー乗車券」とあります。
ついでに駅の出札窓口の係員に聞いてみることにしました。 三陸鉄道南リアス線は全長約37キロの路線。第三セクターで運営する鉄道の草分け的存在で、20年前はかなり新聞やテレビニュースなどで大きく取り上げられていました。そういえば、以前、テレビの「決定的瞬間」という番組で、三陸線の車輌が強風にあおられて横転する瞬間を捉えた映像があったことをふと思い出してしまいました。「今日は風は吹いてないから大丈夫なはず…」と思いながら車窓を眺めてみます。トンネルが多い路線なので、リアス式海岸の全貌を見られることはありませんが、時々見える青い海はやはりきれいなものです。
30分ほどで吉浜駅に下車。PHSの電波が圏内に入っているので、さっそく今日の宿泊先、遠野YHに予約をまずは入れて、海に向かって歩き出します。 もうしばらく歩いていると、道の真ん中に一匹の猫を発見。通常ならば逃げてしまうのですが、とてもおとなしい。写真を撮っていると、近所のおばさんが「あら、ここにいたのね」と猫に話しかけています。近所の飼い猫とのこと。 さらに散策。「いつものように食卓へ迎えてください」と乳製品は狂牛病の心配がないことを告知するポスター、看板には「洋品」と書いていながら、店内を覗くとサカタのタネと雑貨しか置いていない「渡辺商店」、歴史的かつ典型的な自宅敷地内に設置された特定郵便局舎(吉浜局旧局舎・現在は道路反対側に移転)を眺めながら海岸へ向かいます。海岸に向かう階段の風景に不思議さを思えたり、野辺のコスモスの穏やかなピンク色に目を奪われながら、これらをカメラにおさめていきます。 秋の高く青い空に、誰もいない海。深く深呼吸すれば海岸独特の匂いが鼻腔にしみ込んできます。高田松原の海とはまた違った、少し寂しげな感じがします。15時前の、夕方近くの雰囲気が周辺に漂っています。 時計を見るとこれまた列車の発車時間が近くなり、駅に向かって歩きます。15時ちょうど、釜石行きの列車は広告ラップを車体に巻きつけたラッピング列車。ところが、窓の部分にもラッピングが施してあり、これでは外が見えないからとラップにメッシュ状の細かい穴をあけているのですが、展望がよろしくありません。まるで金網から外を眺めているような気分です。仕方がないので窓を開ければ今度はトンネル突入でディーゼルエンジンの騒音が入ってきます。ラッピングは構わないですが、窓にまでラップするのは勘弁してほしいところです。
釜石に到着し、釜石線の接続時間を使って、立ち食いそばのスタンドで遅すぎる昼食を摂り、再び列車に乗り込みます。
遠野へは10年前から何度も訪れていましたが、ここ数年訪れる機会はなく、「久しぶりだなぁ」という気分でいっぱいです。「岩手上郷」、「青笹」などの地名を聞くとふと胸が躍ります。 18時前、YHに到着。3年前、就職前に訪れた時と雰囲気は全く変わっていません。とても落ち着く場所で、私がとても気に入っているYHのひとつです。私を含め7人が泊まっており、ほとんどが私と同じく会社勤めの方々。紅葉を撮りに出かけた方、私のように気分転換で東北に来てみたという方、見ず知らずの人たちだけれども、気軽に話ができる貴重な場所です。夕食を摂り、ティータイムにコーヒーを飲みながら談笑が続き、気がつけば午前1時を回っていました。
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