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ほや燻製
帰りの新幹線の車内で地酒を片手につまんだのがこれ。
ひとくち含めば独特のうまみが広がります。

 1日だけの小さな旅から、数日がかりの旅まで、日記風に描く旅行記です。
今回は2001年の10月に平泉・三陸沖・遠野をめぐった際の記録です。

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10月22日(月)
遠野(9:46)→福泉寺→道の駅・遠野風の丘(12:00)

遠野YH全景  8時の朝食時間の呼びかけで起きました。少し雲が出ていますが、晴れています。
 YHのダイニングから見える水田、そして遠方に山々を望む風景は、いつ見ても気分が落ち着きます。このダイニングから晴れた空を見た日、雨を見た日、雪を見た日…以前に訪れたときのことを思い出します。

 同宿の方々に見送られてYHを後にします。次に来られるのはいつになるのだろうか…と思いつつバス停に向けて歩いています。昨日、釜石線で遠野に着いた際、バスの待ち時間を使ってレンタカーの予約をしたため、レンタル時間に間に合うバスに乗ろうとしているわけです。いつも列車で通り過ぎてしまう釜石線沿線をゆっくりとクルマで走ってみようというのが今日のプランです。

似田貝バス停  似田貝(にたがい)バス停の待合所がいつの間にか、かや葺き屋根の趣き深いものになっています。バス停の裏には、仮設型のトイレまで設置されています。待合室に入ると、懐かしい家の匂いがしました。
 9時46分、定刻に遠野バスセンター行きの早池峰バスが到着。車内はお婆さんで満席でしたが、途中の遠野病院でほとんどが降りていきました。早池峰バスは比較的新し目の車輌を導入しているようで、車内は昨日同様快適です。一方、岩手県交通バスの場合、むかし東京や埼玉を走っていた国際興業バスの中古車を使っているため、エンジン音がうるさく結構ガタガタします。逆に、そのエンジン音が好きだといってわざわざ乗りにくるファンもいるとか…。

 遠野駅に到着し、レンタカー受付へ行く前に観光案内所兼物産品店で、周辺地図を入手したり買い物をしてみます。冷蔵ケースを見ると見慣れないドリンクを発見。
 「マスカットサイダー」
とあります。昨日訪れた陸前高田で製造しているのですが、瓶を見ると「リボンシトロン」、「三ツ矢サイダー」と書かれています。砂糖水に炭酸と香料を加えるだけで作ることができるため、地方の飲料メーカーが独自ブランドのサイダーを作ることは結構あるようです。
 珍しい飲料には目がないので、さっそく瓶を2本買い求めます。1本100円ほどです。池袋のNEVER MINDというお店では、この「マスカットサイダー」を500円で飲めるそうです。

 加えて、以前から飲んでみたかった遠野の地ビール、「ズモナ」も一緒に買い求めてみることに。「クリスタルヴァイツェン」というタイプのものですが、どんな味がするのか、帰ってからのお楽しみです。しかし、ガラス瓶で荷物が重いです。

 それではレンタカーで出発です。今日の車種はマツダファミリア1500CC車。一人しか乗らないので、1000CCクラスでも十分だったのですが、空車がなかったとのことで、ワンクラス高いクルマを借りることになりました。ひと通り点検を済ませ、持参してきたカセットテープをデッキに突っ込む…これは私がクルマに乗るときにいつもやることです。

福泉寺の入り口 境内の紅葉 稲荷さま

 そういえば、YHに近いということで今まで出かけていなかった福泉寺へ行ってみようと思い、先ほどバスで来た道を戻っていきます。国道340号線を快走すること約10分ほどで福泉寺に到着。
 あんべ光俊という、岩手在住のシンガーソングライターが1977年に発表した「遠野物語」という曲の中に「月夜の晩の福泉寺…」という歌詞があったのを思い出しながら境内を歩いていましたが、どうも敷地が広いようで、半ば小走りしながら参道を進みます。ところどころ木々の葉が色づいていて、ようやく紅葉を目の当たりにすることができました。露出補正に気をつけながらカメラに収めます。

福泉寺本堂 福泉寺から見た遠野遠景 五重塔と紅葉

 大観音、多宝塔、五重塔を眺め、静まり返った境内を歩いてみますが、そうそうゆっくりもしていられないので、1時間ほどでクルマに戻り、時速75キロ近いスピードで農道の直線道路を突っ走ります。

 しばらく走り、国道283号線沿いにある「道の駅・遠野風の丘」で休憩。風力発電のプロペラタワーが目印の建物ですが、地元で採れた農産物を購入できたり、郷土料理などを食べることができます。昼食を摂るならここはおすすめです。
 店内の農産物直売所を巡っているうちに珍しいものを発見しました。
「暮坪かぶ」 です。遠野でしか生産されていない、一見すると大根に似ていますがカブです。どのように調理するか分からず、店員に訊いてみると、
「辛味があるので、蕎麦の薬味とか漬物にして食べる」
のだそうで、劇画「美味しんぼ」32巻でも出てくるそうな…。ならばと、自宅で蕎麦を茹でて薬味にして食べてみようかとさっそく買い込んでみます。1本100円ほどです。パッケージには「遠野かぶ」と書いてありました。ちなみに「暮坪かぶ」は商標登録されているそうです。
 しばしの休憩ののち、綾織の分岐点で花巻方面へ向かう国道283号を引き続き進みます。

遠野風の丘(12:00)→宮守→田瀬ダム→成島毘沙門天→新花巻→花巻(18:00)

 穏やかな日差しのもと、快走しています。こんなときは冷房をかけず、窓を全開にして走ってみるものです。秋特有の風が耳元を騒がし、髪を揺さぶります。クルマは遠野を過ぎ、宮守村に入っています。

橋梁上を誰かが歩いている! 宮守のめがね橋

 10数分ほど走ると、今回クルマで釜石線沿線を走り、眺めてみたかった物が目の前に現れました。宮守の「めがね橋」です。夜間はライトアップされ、橋の上を列車が走れば、あの銀河鉄道(「…の夜」もしくは「…999」)を連想します。夏場にはSL列車も運転され、周辺は鉄道写真趣味のファンで群がる場所です。橋のそばまで歩くと軽便鉄道時代の橋桁の遺構も目にすることができ、この細いレンガ造りの橋桁にどのような列車が走っていたのかとふと想像してしまいます。

 今回は沿線をゆっくり走ることが目的なので、道の駅も「各駅停車」です。宮守の「道の駅」は、ショッピングセンターも兼ねていて、地方のスーパーマーケットにありがちな、「平屋建ての敷地に生鮮食料品から酒屋、書店、クリーニング店、食堂、ゲームコーナーを取り混ぜた店舗」のようなつくりです。

 その片隅に農産物直売所を発見し、陳列品を眺めていると、生わさびを発見。宮守はわさび田の産地でも知られています。遠野のマスコットキャラクターに「カリンちゃん」というのがありますが、宮守はわさびをキャラクターにした「ミーくん」なるキャラクターがあります(←宮守村ページ参照。さっそくこちらも2本ほど買い込んでみます。以前、長野の安曇野に出かけて生わさびを買って以来、チューブやパックに入ったわさびとは格段に違った味と香りが好きになりまして、これでしばらくはこの味と香りを愉しめます。

 ついでに、そのわさびをビールに含めた「ワサビエール」もついでに買ってみます。以前、新花巻で買い求めて新幹線で飲んだことがありますが、美しい緑色と不思議な味覚に出あうことができます。今すぐ飲んでみたいところですが、クルマを運転しているのでいけません。

田瀬ダム遠景  時間は昼過ぎ。このまま花巻まで直線で走ってしまうとあまりにも早く着きすぎるので、どこかに寄り道してみようと思い、クルマを東和町国土交通省の管轄施設、田瀬ダムへ向けてみます。15分ほど坂道を登ると、巨大なコンクリートの絶壁が見えてきました。クルマを降り立ち、放水口に向けて歩いてみます。ダムの放水口をずっと眺めているとやはり恐怖心をくすぐられます。しかし、ダムの周辺は至って静かで、ときどき野鳥のさえずりが聞こえてくる程度です。木々の特有の匂いがかすかに漂います。

ダム背後の田瀬湖  ダムを抜け、再び国道283号線を花巻方向に進めます。14時過ぎ、土沢駅付近にたどり着きます。レンタカーの返車時間までまだ2時間も余っています。またどこかに寄り道してみたくなりました。地図を見ると、土沢駅の近くに「成島毘沙門天」があることを発見し、針路を南側に向けてきます。

成島熊野神社入口 熊野神社 趣深いお堂

 ケヤキの一本木の彫成仏の中では日本最大といわれる毘沙門天を目の前で眺めると、やはりその大きさと威圧感に圧倒されます。蝦夷を鎮圧させることを祈願して創られているため、毘沙門天が仁王立ちしている足元にはいわゆる蝦夷(えぞ・えみしとも言う)が踏み押さえられている姿が表現されています。この像をみてふと考えてしまったことがひとつ。
 この踏み押さえられた側の存在は、いったいどのようなものであったのだろうか…。

 成島を過ぎれば花巻も目の前です。昨年に訪れた宮澤賢治記念館や童話館を通り過ぎ、新花巻駅そばのガソリンスタンドで給油していると、私の携帯電話が鳴ってきました。勤め先のメンバーからです。この3日間、会社のことも仕事のことも忘れていたのに、いきなりあの忌まわしい日々に戻されて、鬱になります。いかんいかん。

 新花巻でレンタカーを乗り捨て返車すると、陽も落ちかけてきました。そろそろ今日の宿を決めなければなりません。一ノ関方面にすぐ出られるように、できれば東北本線花巻駅近辺の宿にしたいところです。駅構内の観光案内所で尋ね、数件挙げてもらった中で素泊まりで一泊5000円の宿を選び、予約します。

 17時過ぎの釜石線上り列車に乗り込み、花巻へ。半日通しで運転していたので、さすがに疲れたのか、短時間ながらも列車の中で熟睡。運転士に「終点ですよ」と起こされ、寝ぼけ顔で列車を降り立ちます。

 今日の宿は花巻西側の「ブドリ」というビジネス旅館。1階が中華食堂、2階がホテルになっています。1人であるにもかかわらず、ツインルームに通され少し得をした気分です。目の前にはコインランドリーもあり、長期滞在にも適しています。

 夕食はやはり賢治ゆかりの店で…と思い、そば屋「やぶ屋」へ。天ぷらそばとサイダーを一緒に注文していたというエピソードが残っている店です。店を出ると雨がポツリと降ってきました。昼までは気分がいいくらいに暖かだったのですが…。

 やはりクルマを使うと行動範囲が広がるものです。少し高いですが、旅先でレンタカーを借りて乗り回してみるのも結構楽しいものです。見知らぬ土地を運転する緊張感、列車と徒歩では行けない場所へ足を運べる楽しみ…。いろいろな「足」を使いこなすのも旅の愉しみです。

 夜のニュースを見ると、毛越寺で「こも巻き」が行われたとの話題が流れています。明日、ちょっと立ち寄ってみようかと思います。


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