月刊看板 / 別冊看板-12 / 発行 02.04 | |||
別冊看板 第12集 さらば年金看板 |
|||
|
連続シリーズで取り上げてきた川口市国民年金看板に変化が…!? 1999年に「複合的誘惑の罠」、2000年には「歪んだ意図」、そして2001年には「新世紀ネンキンカンバン」と題して、埼玉県川口市の国民年金啓発看板について3年間に渡って取り上げてきた。
この看板は毎年1月になると新しいヴァージョンに入れ替えている。しかし、今年は様子が違う。1月を過ぎても2001年版がいつまでも貼付されたままだったのだ。何か様子がおかしい、そう思ったところに市の広報紙「広報かわぐち」2002年3月号が目に入った。 2000年4月より施行された「地方分権一括法」により、国の事務を地方公共団体が代行して実施する「機関委任事務」が廃止され、「国の事務は国で」、「地方の事務は地方で」という区分けが明確になった。これは地方公共団体のイニシアティブを高めて、「何でも国にお伺いを立てる」という考え方から、「自分の街のことは自分たちでやる」という考え方へのシフトを狙ったものだ。本来、国民年金は国が年金料を管理、運用し給付するものだが、国民一人ひとりから徴収することは非常に困難かつ煩雑なものであり、徴収などの事務を住民サイドの地方公共団体に任せていたのだ。 しかし、近年のコンピュータ化により、徴収事務が一括して管理できるようになったこと、近年の年金財政の悪さから必要以上の経費を出さないようになったことから、何も地方が事務を代行する必要はないと考え、今回のような制度見直しにつながったのである。 前置きが長くなってしまったが、2001年版の看板がいつまでも貼付されていた理由はこんなところにある。年金に関する啓発も地方公共団体が行う必要がなくなったため、看板も制作されなくなったのだ。 ▲彩の国まごころ国体 / 材質:薄型樹脂板 撮影2002.4 埼玉県川口市内にて その結果、市内随所に設置された年金課の広告看板スペースは、次々と市の広報スペースにチェンジされつつある。ちなみにこれは2004年に埼玉県内で開催される「彩の国まごころ国体」の市内開催競技をアナウンスする看板だ。この鳥のようなキャラクターは、県の鳥「シラコバト」をモチーフにしたもので「コバトン」と呼ばれている。 新聞やテレビ、雑誌を読んでいると「総理は改革、改革と言っている割には、その改革の実態が見えない」と批判する記事やニュースを目にするが、ところがどっこい、街中の看板の中から「改革」の動きは見えるのだ。 それに気づくことができる。 毎年「リリアンズ」の新メンバーの奇抜なコスチュームで街中に話題を提供していた年金看板のシリーズは、「改革」の名のもとに幕を閉じた。 さらば、年金看板。 取材・調査・撮影2002.4、執筆2002.4
|
|