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 1日だけの小さな旅から、数日がかりの旅まで、日記風に描く旅行記です。
今回は2003年の1月に会津・鳴子・遠野をめぐった際の記録です。

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1月27日(月)天気 岩手:雪
遠野(9:00)→花巻・平泉・一ノ関→大宮(17:34)

 7時30分、目が覚めると喉がいがらっぽく、空咳も出ます。昨晩、石油ファンヒータをつけっ放しにして寝たのが原因かと思いつつ床から起き上がります。
 朝食は頼んでいなかったのですが、宿のご主人がいろいろと食べ物をくれます。バナナにビタシーロイヤルD、そしてヤ○ルト。すごい組み合わせと思いながらも、バナナは普段から朝食で食べているものなので喜んで食べたのですが、問題はヤク○ト。品質保持期限が一週間前の03.01.21とあり、これだけは手をつけようかと迷い、結局持ち帰って品質保持期限」のもたらす意味を調べてから口をつけることに。

 昨日に続いてご主人としばらくだべりながら、今日の予定を考えます。夕方に帰ることを目標に、時刻表を繰り、11時過ぎの快速で遠野を発ち、平泉へ立ち寄るコースにします。帰り道は無理をせず、いつも出かけている場所を寄るのが私の旅程です。

 「市内を回るならうちの自転車使ってきなよ。荷物は預かってるから」
とご主人。お言葉に甘えて宿に大きな荷物を預け、列車出発までの間、市内を散策することにします。
 空からは小雪がちらついています。玄関先は雪が凍結しアイスリンク状態になっており油断すると滑走してしまいます。このような雪道を自転車で走っている人など、周りには誰もいません。それでも歩くよりは遠出できるので、3段切り替え式の軽快車をブレーキを使わず走らせていきます。

…の街を自転車に乗り…

 駅前でつるはしで凍った雪を砕く風景を眺め、昨晩歩いた親不孝通りを抜けていきます。やはり朝だけあり、しんと静まり返っています。釜石線と交差する歩道橋を渡り、材木町、下早瀬橋、大工町、一日市通りを抜け市民センターへ。今日は月曜で市立博物館と図書館は休館。向かいのあえりあ遠野の立派な建物を拝み、南部神社へ。

遠野駅北側跨線橋より花巻方を望む 南部神社本殿 お参りのしかた

 神社に向かう急な勾配の階段には雪が積もり、前人の足あとを踏みながら登っていきます。賽銭箱の横に「お参りのしかた」が書かれたボードがあり、覗き込んでみます。祝詞の内容まで書いてあって、ずいぶんと細かく書いてあるものだと感じます。市街地を一望できる鍋倉城址まで行きたかったのですが、いかにせよ雪が深く、断念。

来内川にかかる柳玄寺橋 国道340号線沿い風景 遠野駅改札口

 再び自転車を走らせ来内川沿いを走ります。94年に発見した柳玄寺近くの木造橋は健在でしたが、欄干や柵の部分が改修されており、当時の雰囲気は薄れてしまいました。それでも市街地で見られる数少ない木造橋のひとつとして残しているのは嬉しいものです。寺町の雰囲気をできる限り壊さない配慮がなされているわけです。おそらく他の街であれば、橋げたごと改修して立派なコンクリート橋を立ててしまうのでしょう。

「広報とおの」の楽しみ

 国道283号沿いを少し走ったところで市役所にたどり着きます。市役所での楽しみは、市報「広報とおの」をもらいに行くこと。商工観光課にはちょうど11月号〜1月号のバックナンバーがあり、それを頂戴します。
 特に1月号は、前年の市政や市内の出来事がダイジェスト版で掲載しているため、これを一冊読めば街で何が起きているのかを理解することができます。

 私は外出先や旅先でさまざまな自治体広報紙を手にとり読んでいますが、広報に力を入れている街には底知れぬ活気があるように感じます。実際に街中を歩いていても、その活気が伝わってくることがあります。
 広報紙に限らず、Webによる情報提供も同じで、自らメディアを用いて積極的に発信しているところには、一度足を運んでみたくなるものです。近年の財政難でこうした宣伝広報費が抑えられる傾向にありますが、何もフルカラー4色オフセット刷りでなくともいいわけで、

  1.行政がどのようなサービスを提供しているのか
  2.住民がどのような生活を営んでいるのか

が分かりやすく、時には楽しく書いてあればいいのだと感じます。

 「広報とおの」の場合、市外の者が読んでも充分に楽しめますが、これは紙面の7割近くを「2.住民がどのような生活を営んでいるのか」に割いており、しかも幅広い年齢層を取り上げている点にあります。そればかりではなく、読んでいると文字でありながら「街の匂い」が伝わってくるところにもあると思います。

 一方、都心に近づけば近づくほど、紙面の内容は「1.行政がどのようなサービスを提供しているのか」で埋め尽くされるようになり、東京23区の広報になると、ほとんどリクルートの情報誌を見ているように味気なくなってしまいます。

 …と文章にしようと考えていたところで、庁舎ロビーにWeb閲覧ができるPCを発見しました。気象情報や列車運転状況を確認してみます。

 ついでにえきねっとで帰りの新幹線の指定券を予約してみます。PCを操作していると、ベンチに座っていた爺さんが

  「これは何ができるんだい?」
  「電車の切符取ったりとか、銀行に振り込んだりとかできますよ」
  「おらにはわからないなぁ」

…と話しながらふと画面を見ると、予約番号を表示する手前でフリーズ。近くの職員に「これ、止まっちゃったんですけど、再起動していいですか」と断った上でWindows98をリブート。予約はやり直しです。
 予約番号を控え、向かうは遠野駅。気がつけば10時40分、そろそろ帰る仕度をしないと列車に乗り遅れてしまいます。
 駅構内の旅行センターで切符を作っている間に荷物を預けた宿のもとへ向かいます。

  「自転車ありがとうございました。そろそろ列車の時間なので出発します。一晩でしたがいろいろとお世話になりました」
  「今度は春頃いらっしゃい。じゃあ気をつけて」
 宿のご主人に見送られ、駅舎へ向かいます。

カリンちゃんのイラストが描かれた乗車案内板 快速はまゆり到着 キハ110急行型車内

 11時27分、快速「はまゆり4号」は少しこもったエンジン音を立てて発車します。今度はいつ行けるだろうと思いつつ、曇ったガラスを手でこすって、小さくなっていくホームを見つめてみます。
 7割ほど席が埋まった車両は以前、急行「陸中」で使用されていたものと同じです。リクライニングを倒し、車窓を見つめていると雪がいよいよ激しくなってきます。

雪の浄土庭園

花巻駅のタクシー料金表  12時21分、花巻到着。さらに東北本線を上っていきます。北上山地から離れると多少雪の降りは穏やかになるようで、

 遠野 粉雪
 ↓
 花巻 ぼたん雪
 ↓
 北上 小雪
 ↓
 水沢 みぞれ

と空模様が変化していきます。13時半に平泉を降り立つと、ほとんど雨で傘をささなくては歩くことができません。

毛越寺本堂  駅前の一本道を歩き、毛越寺へ。過去にYHへ泊まりったりと、このお寺には機会があるたび足を運んでいます。今回は雪景色の浄土庭園を見たくなりました。
 本堂前の砂利道には水を含んだ雪が積もっており、お寺の職員が2人がかりで雪かきをしています。いくら雨が降っているとはいえ、こんなに水びたしになるものかと思っていたところ、昨日の26日、文化財防災デーで訓練が行なわれたとのこと。水びたしの原因は本堂への放水だったことが分かりました。

 いよいよ浄土庭園へ。言わずもがな、一面真っ白です。2001年秋の風景と較べて見ると分かりますが、池の上にも降り積もり、そのまま歩いても大丈夫そうな感覚に襲われます。
 この庭園、眺めているとさまざまな想像が湧いてきます。まして雪の季節なので、あたかも白い紙を渡されて「感じたことを思い描いてみてください」と語りかけているようにも思えます。
 門を出ると、下校中の小学生が小道を歩いていきます。この時間だとおそらく低学年でしょうか。ふと私が小学生の頃、4時間目終了で帰れることが何よりも嬉しかったことを思い出しました。

 一昨日より腹の調子が悪く、さらに喉が痛いことも重なり、あまり重い食事に手が延びません。平泉駅待合室の「軽食堂」でかけそばを注文し、それをすすると荒れた喉に引っかかり、むせます。苦しい。かといってそばをすすらないで食べるほど味気ないものもなく、むせ返らないようにペースを落としてすすります。
 今となっては地元のお客さんくらいしか降りなくなった平泉には、かつて修学旅行の学生たちや団体客で賑わっていたのだろうな…と思わせるものがあります。列車が止まらなくなって久しい1番線ホームの臨時改札跡、コインロッカー前の団体待合所、そして団体待合所の観光案内板に注目です。

平泉駅前で雪遊びをする小学生 平泉の古い観光案内板(1) 平泉の古い観光案内板(2)

 この観光案内板、花巻から花巻温泉に至る私鉄線路(花巻電鉄)が時代を語ってくれます。遠野が観光地として記載されておらず、盛んに宣伝が行なわれた国鉄の「ディスカバージャパン」キャンペーン以前の物件と推測されます。
 修学旅行で平泉を訪れる学校は現在でも多数ありますが、ほとんどの場合、仙台からバスを使って移動することが多く、普通列車しか止まらない平泉駅には降り立たなくなってしまったのです。近頃で見かけた平泉駅下車の団体といえば、遠足目的の地元小学生でした。

ハプニング

 冬のオフシーズンにめぐっていったこの旅もそろそろ終わりです。一ノ関から「Maxやまびこ60号」で帰宅の途へつきます。
 一息つこうと車内の売店でコーヒーを買い求め、テーブルにそれを置いて席につこうと思ったところ、足がテーブルに引っかかり、買ったばかりのコーヒーは一口も飲むことなく床下に散乱
 これはまずいと慌てて拭き取りましたが、運の悪いことに脱いだばかりの靴の中にまで浸透しています。
 帰り道にとんだハプニングです。私は子供の頃から飲料を飲む前からぶちまけると、なぜか次の日に発熱して風邪を引きます。おそらく、ウイルスが体内に侵入すると筋肉が思うように動かず、注意散漫になるのだろうと考えられます。
 「これは明日、熱が出るな」と確信しました。

 17時34分、大宮に定刻到着。列車を降りると
  「ご乗車ありがとうございます。おおみやー、おおみやー」
というアナウンスが聞こえます。かつて在来線急行を降り立ったときに聞いたアナウンスに似て、妙に懐かしさを覚えながら、新幹線ホームをあとにしました。

後日談

 帰宅した翌日、案の定38度近くの高熱を出し、医者でインフルエンザの診断を受けました。体調を回復するのに1月末までかかりました。旅の途中、至るところで体調が思わしくなかったのですが、やはり前兆というものはあります。

 3泊4日の移動型旅行でした。移りゆく風景を見ながら、はじめは白いだけだと思っていた雪景色にも、さまざまな「色」があることに気づきました。
 降雪を考え、街中を歩き回るよりは列車による移動を中心にして旅程を立ててみましたが、もう少し時間に余裕があった方が楽しめたかなと思います。乗り継ぎ列車の接続が意外に良く、待ち時間での駅前散策がしづらかった部分がありました。

 YHやビジネスホテル以外の宿にも楽しみがあることを発見します。湯治自炊宿や民宿などは人との交流が楽しめますし、何よりも料金が安いです。素泊まりにして、街中の料理店に入るのもなかなか楽しめます。ただ、気をつけたいのは風呂あがりの「活性原酒」です。

 さて、1日目に出会った只見線の高校生ですが、1ヶ月経った現在でもメールのやり取りは続いています。自宅が遠方にあるため、寮から通っており、毎日片道1時間を只見線の車内で過ごしています。寮でのできごとや悩みごとを送ってくると、他人事とは思えず、10数年前の自分を思い出しながら返事を書いていたりします。

 久しぶりにいろいろな人と出会うことのできた旅でした。

→旅行費用:6万前後(交通費・宿泊・現地滞在費全て含む)


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