My Trip/ 遠野での出会い−1992-4 / 92.3記録 04.08改版 | |||||||||||||
遠野での出会い−1992[その4] | |||||||||||||
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この文章は、1992年春に私が遠野方面を旅したときの記録です。 4・1992年3月29日-2
〜山小屋の風景〜
修理してもらえる眼鏡店を聞くため、いったんYHに戻ってペアレントに聞く。駅前にあるという情報を聞く。
「このままTさんが自転車で駅まで行ったら帰りはどうなるの。誰かが自転車を引いて帰らなきゃならなくなるよ」
U氏はT氏に『山小屋』の所在と電話番号を書いたメモを渡した。『山小屋』はU氏が強く薦めるお店だという。
『山小屋』は東館町、遠野市役所前にある。
私たちが『山小屋』に着いてからわずか2分後、T氏の乗った遠野交通タクシーが到着すると、3人揃って店のドアをくぐる。 この店ではハンバーグステーキをおすすめ品にしている。ソースに特徴があり、U氏はホワイトソースを、I氏はトマトソースを注文した。ちなみにT氏と私はカレーライスを注文したが、聞くところによると、『山小屋』のカレーライスの「山盛」は「洗面器大の」皿に盛られるという。さすがに私は注文しなかったが、その洗面器とやらを一度は見てみたいと思った。 運ばれたカレーライスを一口。はじめは「少し甘いかな」と思うが、しだいに辛さが増してくる。しかしその辛さは舌を執拗に攻撃するものではなく、次の「もう一口」を求めてくる辛さだ。自転車で走り回って空腹だったことと、あまりのうまさに併せて一気に皿を空けた。 私が食べ終わった10数分後、ようやくハンバーグステーキが運ばれた。U氏からひと切れ拝借すると、これもまた何ともいえずうまい。肉汁が口中に広がる。 初めて行った『山小屋』がとても気に入った。今度遠野へ行くときにまた寄ってみたい。そのときはハンバーグステーキを頼んでみようかと思う。それとも「洗面器大の山盛カレーライス」に挑戦してみようか。その前に私の胃と相談だ。 〜卯子酉神社の風景〜
「食後の運動」も兼ねて、再び自転車をすべらせること約15分、未舗装の小道を曲がった先にある卯子酉神社(うねどりじんじゃ)へ赴く。
伝説といっても嘘ではなく、この神社のおかげで良縁を結んだという情報も多々あるという。
その中に、青い布が結んである木があった。
赤い布切れをT氏は杉の木の枝に、I氏は社の格子戸に結んだ。
境内には結びつけたはずの赤い布が、哀しいことに杉の木から地面に落ちて色褪せている風景を見た。この布を結びつけた人の現在を考えると夜も眠れなくなる。 〜見送りの風景〜
金勢様、廃校、山小屋、卯子酉様を共に歩いたT氏が東京への帰り道につこうとしている。
所在が気になっていたところ、U氏の姿が見えた。小箱を手にしていた。
T氏はとても感激していて、表情を隠さずにはいられなかった。 YHを通じて知り合ったひとりの旅人が去っていった。 〜酒盛の風景〜
先日U氏が持ち込んだ酒の封をこの夜に開けた。
YHではアルコールは禁止されているが、最近規則が変わって少々のアルコールなら飲めるようになった。 夜も更けた23時。ヘルパーが持ってきた湯呑みとともに『活性原酒 雪っ子』、『遠野物語・生吟醸』の緑の五合瓶が瓶の外に露をつけて姿をあらわした。冷えている証拠だ。昨日U氏がこの瓶を見せて、「強度のアルコールはねえ」とペアレントに言われ、客の少ない日に出して下さい、と言われた曰くつきの五合瓶である。
これからはミニ利き酒大会だ。まずは、『活性原酒 雪っ子』が湯呑みにとくとくと注がれる。『雪っ子』は濁り酒でアルコール度は20.3度。この酒を買ってきたU氏への感謝を込めて乾杯後、地酒の味を嗜む。この濁り酒、飲み口は甘いが、アルコールの高さのためか舌と喉に響きわたり、それが持続する。
数分もせずI氏とK氏の顔面が桜色と化す。続いて『遠野物語』が注がれる。
京都からきた同宿者氏が酒に結構強く、濁りの瓶に何度も手を掛けた。こうして『雪っ子』は30分ほどで底が見えてきた。飲みながらK氏が居酒屋でアルバイトをしていると話していたが、ついでにバイト先の居酒屋で飲んでいるのではないかと周囲から詰問されている。私も『遠野物語』を手酌している。I氏が首の周りにしっしんが出始めてかゆくなったところで酒の瓶は底をついた。
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