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■沿線名物
仙台麩
焼き麩とはちがった深みと香ばしさ。輪切りにして味噌汁や煮物に入れると最適。
地元スーパー並みの販売価格でご提供。
ばくらい(莫久来)
ホヤとナマコが仲良く塩辛になりました。
仙台の寿司屋でこれを軍艦巻きにしていただきましたがとても美味。
好きな人は嵌る珍味。
パパ好み
古川で昭和30年代から発売されているおつまみ。某「○ごのみ」はこの商品を参考にしたとか。
うるち米、もち米で作られたあられ、せんべいの組合せが絶妙。つまんでもつまんでもピーナツだらけの小袋おつまみに飽きた方におすすめ。
大久保のかりんとう
岩出山名物、一斗缶に入ったかりんとう。脂っこくないあっさりとした甘さがあとを引きます。
白石温麺
温麺と書いて「うーめん」。白石の名産品。
油を使っていないからあっさりつるつる。

 1日だけの小さな旅から、数日がかりの旅まで、日記風に描く旅行記です。
今回は2003年の1月に会津・鳴子・遠野をめぐった際の記録です。

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1月25日(土)天気 福島:晴れ 宮城:晴れ→雪
会津高田(10:19)→会津若松・郡山・仙台・小牛田→鳴子御殿湯(16:28)

軒先のつらら  朝5時頃、寒さに一度目が醒めるも、また眠りにつき、再び起きたときには7時半を回っていました。

 朝食後、おふたりの会社員を見送ったのち、YHに備えつけのパソコンからJR東日本の列車運転状況を確認します。ノートパソコンなど抱えて旅をするとそれだけで荷物が重くなってしまうので、こうして宿泊する場所にインターネットに接続できるパソコンがあると、非常に重宝します。

会津野YH周辺風景1 会津野YH周辺風景2 会津野YH周辺風景3

 9時30分、YHを出発。昨日の風雪とはうって変わり、空は青々と晴れ上がり、一面に広がる雪野は眩しいほどに輝いています。このYHへは3年前の秋に一度来たことがありますが、翌朝に見た周辺の風景がとても気に入り、再訪を願っていました。どこまでも続く雪原を眺めていると、くすんだ青色から、明るい黄色、そして深い緑色に変化していきます。反射光がまぶしく、目が眩惑しているためです。

 道路は除雪ドーザーが降り積もった雪を取り除いたあとで、路面が部分的に固まっています。そこを間違えて歩くと転倒してしまうので、「わだち」をできるだけ避けて歩いていきます。
 会津高田駅前の御田神社へ立ち寄ると、神殿の縁側で猫の親子を発見。近づくと咄嗟に逃げてしまいました。こんな寒いのに、雪の上を歩いていく猫がいるものなのですね。2匹の足跡で作られた道が雪野にくっきりと映えます。

会津高田集落案内板 会津高田の路 会津高田駅

 待合室で列車を待っていると、メールを着信。昨日の只見線車内で出会った高校生からです。
  「メールが届いて嬉しいです。これからも送ってくれますか?」
 とのこと。これより彼へ旅先のできごとを送ることになります。

時速60キロのメーター  10時19分、雪のため4分遅れで到着した列車で会津若松へ。只見線のディーゼルカーは相変わらず時速60キロほどのスピードで会津盆地を駆けていきます。エンジンをひとふたふかす音が聞こえると、列車は会津若松のホームに滑り込みます。
(→駅到着に至るサウンド[RealAudio 2.2MB])

 「あいづわかまつー、あいづわかまつー」

特別急行ホリデーあいづ号 と郷愁漂うアナウンスを耳にしながら接続列車に乗り換え。会津若松からは「特急ホリデーあいづ」で郡山に向けて磐越西線をひた走ります。懐かしい国鉄時代の特急車両が使われていました。どこかで見た車両だな…と思っていたところ、新幹線が八戸へ開通するまで特急「はつかり」として東北本線を走っていた車両でした。はるばる青森から仙台へ転勤してきたようですが、経年の疲労感は拭い去れず、内装や乗り心地にどこかくたびれた感があります。車内に加速をオン、オフするモーターの音が響きます。列車がうねるカーブを抜け、勾配を降りていく様子が音からも分かります。(→発車時のアナウンス[RealAudio 1.2MB])
 車両はくたびれていますが、特急列車の窓から見る風景は、普通列車のそれから眺めるものと違い、額縁に飾られた絵画を眺めているような、そんな気分になります。

福島から乗った701系  郡山に約5分遅れて到着。列車接続の関係で郡山から新幹線で福島まで先を急ぎます。2階建て新幹線Maxの1階部分に鎮座したため、見えるものは橋桁のコンクリートだけ。ほとんど「移動」するために乗ったようなものです。
 福島から再び普通列車の旅です。接続列車待ちで10分遅れで発車。会津若松を出たときにはきれいに晴れ上がっていたのですが、こちらは雪がちらついています。藤田付近まで細かい雪の粒が斜めに降りそそいでいますが、宮城県内に入って再び晴れ間が見えてきました。

 今回の旅では携帯電話(PHS)が大活躍。自宅を出るときに端末からWebサーバに書き込みができるプログラムを設置して、旅先の出来事をメモ代わりに打ち込んでいきます。もっとも、手帳に書き込んだほうが早いのですが…。

 車内が騒々しくなってきました。私の隣の席に座っている女の子は、窓の桟に鏡を置いて、揺れる車内でマスカラを引いています。まるで子供がロングシートに窓を向いて座るような体勢で、じつに器用だと感心しました。
 14時15分、仙台に到着。仙台も14年前にはじめて訪れて以来、ずいぶんと大都市に変わっていっています。西口の改札もすべて自動改札になっていました。10分の停車中、改札に出て「政宗弁当」を買い込み、発車と同時に食べ始めます。ロングシートで弁当を食べると視線が気になってしまうのですが、空腹には勝てません。2段すべて食べ終わって食後のデザート代わりに塩釜〜松島付近の海岸のチラリズム的車窓を見ていると小牛田到着。

陸羽東線のキハ111  小牛田からは「奥の細道 湯けむりライン」の愛称がついている陸羽東線に。15時12分発の鳴子温泉行きはディーゼルカーを2両連結し、新車独特の軽快だけれども力強いエンジン音を響かせて田園地帯を走り抜けます。
 先ほどから4人がけのボックス席に座っていますが、何か床がべとべとしており、気分がよろしくありません。古川で隣のボックスに移り、再び横たわって窓に広がる夕方の空を眺めながら車内を過ごします。

古川付近の田園地帯を走る 夕方の冬空 雪道に揺れる気動車

 16時40分、本日の宿泊地である東鳴子温泉の最寄駅、鳴子御殿湯駅に到着しました。この駅、かつては「東鳴子駅」と呼ばれていましたが、1997年に現在の名称に変わっています。
 移動だけで半日が過ぎましたが、今回の旅は列車に乗っている時間が多いとつくづく思います。
 駅から歩いて3分の距離にある「いさぜん旅館」が今日の宿です。

東鳴子温泉の夜〜恐るべし、雪っこ〜

湯治宿の猫  湯治宿は生まれてはじめて。旅館のご主人さんが館内を案内しながら、湯治宿のしくみを説明てくれます。私の第一印象は「共同アパート」といったところ。6帖一間で冷暖房テレビ完備。バス・トイレ・洗面所・キッチンは共同。しかもキッチンのガスはコイン式。部屋を確保すれば、あとはすべて自分の時間。食事は自炊で作ってもいいし、外食してもいい。風呂は温泉なので入りたい放題。
 今回は一泊素泊まりですが、ふだんから自炊生活をしている私にとっては逆に居心地がよく、1週間くらい滞在しても何ら苦がないと思いました。もっとも湯治場の自炊宿は、2週間くらい滞在して温泉に浸かりながら日頃の疲れやストレスを取るところ。ご主人曰く「身体のオーバーホールをするようなものです」と。

すっかり日が落ちた鳴子御殿湯駅  部屋に荷物を置き、夕食がてら温泉街を歩いてみることに。まずは隣の鳴子温泉に行ってみたいと思い、鳴子御殿湯16時52分発の列車に飛び乗り、終点鳴子温泉駅に下車。
 この鳴子温泉駅も鳴子御殿湯駅と同様、1997年に駅名が改称されています。かつては「鳴子駅」、読み方は「なるご」でしたが、名前が濁るのは駅名だけで、地名は「なるこ」と読むのだそうで、地名と駅名を揃えて、かつ観光PRにと「温泉」までつけて現在に至っています。
 駅を降り立つとどこからともなく硫黄泉の香りがしてきて、温泉場であることを嗅覚から感じ取ることができます。空はすっかり薄暗くなり、その合間を縫って粉雪が舞い降りてきます。
 これから「日本こけし館」に出かけようと駅の観光案内所で聞いたところ、「春まで休館です」との回答。キャビネットにしまってあったパンフレットだけもらうのも面白くないので、Webサイトに掲載されていた「足のお守り下駄っ子」というマスコットを思い出し、購入できる場所を聞いてみます。

 場所は駅から歩いて2分の商店街にある「入駒電器時計店」。どうして電器屋さんにお守りが? という疑問を晴らすべく店内に。店内には色あせたCDアルバムや家電製品が置いてあります。小型のラジカセはきっと、湯治客向けに需要があるのかもしれません。これらの家電製品と並んで猫の置物などの手製小物が陳列しています。
 さっそく「下駄っ子」を買ってお店の奥さんに話を聞いてみます。

 「これは私が手作りしてるんだけどね、インターネットで紹介されて人気になってね…。
 鳴子にはうちみたいな時計職人がいっぱいいたんだけど、今はね、分解掃除なんてしなくなったから…。だからうちも旦那と息子は電気工事で外に出て、私は店を任されてるわけ。
 ここは過疎が進んでるから、なにか話題が作れないかと思って、これを作ってみたんです。作ったものは近くの足尾神社に奉納してから並べてます。
 はじめはお年寄り向けに作ったんだけど、意外と若い女性にも人気でね…
 毎年新作を作っているので、今度は柿の木に実った柿の実をイメージした飾り物(鳴子かざり)を作ろうかと思ってます」

 自らの手芸を活かして町の話題を作る奥さんの、穏やかな意気込みを感じました。過疎と産業の変化という大きな波が見えてくるのですが、その波を自らの手で、できるところから乗り越えていく姿がここにはありました。
 感慨深げに店を出ると、「栗団子」という張り紙のかかった向かいの店が目にとまり、迷わず入ってみます。そこで私は
  「あわだんごください」
と言ってしまいましたが、「くりだんご」の間違い。目が悪いので「粟」と「栗」の見分けがつきませんでした。ずしりと重い「栗団子」の中身が気になりつつ、折り返し小牛田行きに乗って、鳴子御殿湯に戻ります。

 駅から東鳴子の温泉街をしばらく歩きます。鳴子温泉とは異なり、温泉街とは思えない町並みです。小さな個人商店の間に旅館があるたたずまい。旅館も少し大きな民家と思えます。10分ほど歩くとコンビニエンスストア「サンクス」のまぶしい店舗と出会い、ここでつまみ代わりにと「酒田米菓のオランダせんべい」を購入。夕食は近くの焼肉店「八兆」でサワーを片手に何品か頼みます。いかにも温泉街といったけばけばしさはなく、自宅の近所の食堂に入ったような気分です。
 通りの酒屋で活性原酒「雪っこ」300ml瓶を買って宿に戻ります。

 いよいよ温泉に入ります。鳴子はさまざまな泉質の温泉が湧く場所で知られていますが、この旅館にもラジウム重曹泉、鉄鉱泉、重曹泉と3種類の源泉が湧き、体質に合わせて入り分けることができます。まずはラジウム重曹泉。こちらはぬるめでゆっくり浸かるのが入り方です。すでに何人かの爺さん婆さんが5人ほどだべりながら浸かっています。言わずと知れた「混浴」です。
  「若い兄ちゃんが…珍しいねぇ」
などと婆さんに言われてしまいましたが、温泉好きに歳は関係ありませんです。
 私は温泉を飲むのが好きで、この重曹泉もさっそく飲んでみます。鉱泉せんべいの風味、と言えば分かりやすいかもしれません。

 隣の鉄鉱泉は少し熱めで、ラジウム重曹泉の後に入るといいとか。やはり鉄分を含んでいるためか、湯船が酸化鉄の赤錆色に染まっています。こうして温泉に浸かることで、半日を列車の移動で過ごし、疲れきった肩や腕の凝りをほぐしていきます。こうして、露天風呂を含め旅館内の3つの湯をめぐったわけです。

コイン式ガスコンロの図  部屋に戻り、冷蔵庫に冷やしておいた活性原酒「雪っこ」を、テレビをみながらちびりちびり。甘味の強い、濃厚なテイストがたまりません。肴は柿の種、オランダせんべい、そして栗団子。栗団子は栗が一粒入った餅団子に甘いしょう油蜜がぼったりとかかっているもの。一口食べるとこれがまた甘い。追分団子の「みつ団子」のような味がしますが、さすがに一箱(8個入り)は食べられません。4個食べたところであまりの甘さにギブアップ

 テレビのニュースを見ていると、今日の15時頃、韓国や日本でコンピュータウイルスが発生し、インターネットに大量のデータが流れ、通信に障害が起きたとのこと。陸羽東線の車内からPHSでWebにアクセスして、いつまでたってもリプライが返ってこなかったのはこれが原因だったのか、と思いながら、只見線で出会った高校生に今日の行路を伝えてみます。数分後、
  「温泉か〜いいな〜一緒に背中流しっこしたりなんかしてのんびりしたいですね」
何ともほのぼのとした返事が。しかしこの高校生はどうして私とメールをしたいと言ってきたのだろうか…見た目旅行者と分かる容姿の人に何かを感じたのでしょうか。
 むしろ私の方が旅先で出会った土地の人とメールをやり取りすると結構面白い、ということを発見しました。

 1時を回り床につくと、天井がぐるんぐるん回っています。この「雪っこ」、アルコール度数20.3度と日本酒の部類ではかなり高め。活性原酒で腹の中でも発酵が進むので、300mlとはいえ、口当たりのよさににまかせて飲んでしまうとこうした結果になります。名前の可愛さとは裏腹に恐るべし、雪っこ。「酒豪殺し」とはよく言ったものです。

 温泉に浸かったあとの酒はよく回る

これは今後の教訓にいたします。
 今でも「みつ団子」の甘味を連想すると、あの栗団子と悪酔いを思い出し、喉の奥が詰まる感覚に襲われます。


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