My Trip/ 冬の東北ローカル線紀行-2 / 03.02開設 | ||||||||||||||||||||||
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1日だけの小さな旅から、数日がかりの旅まで、日記風に描く旅行記です。 1月25日(土)天気 福島:晴れ 宮城:晴れ→雪
会津高田(10:19)→会津若松・郡山・仙台・小牛田→鳴子御殿湯(16:28)
朝5時頃、寒さに一度目が醒めるも、また眠りにつき、再び起きたときには7時半を回っていました。 9時30分、YHを出発。昨日の風雪とはうって変わり、空は青々と晴れ上がり、一面に広がる雪野は眩しいほどに輝いています。このYHへは3年前の秋に一度来たことがありますが、翌朝に見た周辺の風景がとても気に入り、再訪を願っていました。どこまでも続く雪原を眺めていると、くすんだ青色から、明るい黄色、そして深い緑色に変化していきます。反射光がまぶしく、目が眩惑しているためです。
道路は除雪ドーザーが降り積もった雪を取り除いたあとで、路面が部分的に固まっています。そこを間違えて歩くと転倒してしまうので、「わだち」をできるだけ避けて歩いていきます。
待合室で列車を待っていると、メールを着信。昨日の只見線車内で出会った高校生からです。
10時19分、雪のため4分遅れで到着した列車で会津若松へ。只見線のディーゼルカーは相変わらず時速60キロほどのスピードで会津盆地を駆けていきます。エンジンをひとふたふかす音が聞こえると、列車は会津若松のホームに滑り込みます。
と郷愁漂うアナウンスを耳にしながら接続列車に乗り換え。会津若松からは「特急ホリデーあいづ」で郡山に向けて磐越西線をひた走ります。懐かしい国鉄時代の特急車両が使われていました。どこかで見た車両だな…と思っていたところ、新幹線が八戸へ開通するまで特急「はつかり」として東北本線を走っていた車両でした。はるばる青森から仙台へ転勤してきたようですが、経年の疲労感は拭い去れず、内装や乗り心地にどこかくたびれた感があります。車内に加速をオン、オフするモーターの音が響きます。列車がうねるカーブを抜け、勾配を降りていく様子が音からも分かります。(→発車時のアナウンス[RealAudio 1.2MB])
郡山に約5分遅れて到着。列車接続の関係で郡山から新幹線で福島まで先を急ぎます。2階建て新幹線Maxの1階部分に鎮座したため、見えるものは橋桁のコンクリートだけ。ほとんど「移動」するために乗ったようなものです。 今回の旅では携帯電話(PHS)が大活躍。自宅を出るときに端末からWebサーバに書き込みができるプログラムを設置して、旅先の出来事をメモ代わりに打ち込んでいきます。もっとも、手帳に書き込んだほうが早いのですが…。
車内が騒々しくなってきました。私の隣の席に座っている女の子は、窓の桟に鏡を置いて、揺れる車内でマスカラを引いています。まるで子供がロングシートに窓を向いて座るような体勢で、じつに器用だと感心しました。
小牛田からは「奥の細道 湯けむりライン」の愛称がついている陸羽東線に。15時12分発の鳴子温泉行きはディーゼルカーを2両連結し、新車独特の軽快だけれども力強いエンジン音を響かせて田園地帯を走り抜けます。
16時40分、本日の宿泊地である東鳴子温泉の最寄駅、鳴子御殿湯駅に到着しました。この駅、かつては「東鳴子駅」と呼ばれていましたが、1997年に現在の名称に変わっています。 東鳴子温泉の夜〜恐るべし、雪っこ〜
湯治宿は生まれてはじめて。旅館のご主人さんが館内を案内しながら、湯治宿のしくみを説明てくれます。私の第一印象は「共同アパート」といったところ。6帖一間で冷暖房テレビ完備。バス・トイレ・洗面所・キッチンは共同。しかもキッチンのガスはコイン式。部屋を確保すれば、あとはすべて自分の時間。食事は自炊で作ってもいいし、外食してもいい。風呂は温泉なので入りたい放題。
部屋に荷物を置き、夕食がてら温泉街を歩いてみることに。まずは隣の鳴子温泉に行ってみたいと思い、鳴子御殿湯16時52分発の列車に飛び乗り、終点鳴子温泉駅に下車。
場所は駅から歩いて2分の商店街にある「入駒電器時計店」。どうして電器屋さんにお守りが? という疑問を晴らすべく店内に。店内には色あせたCDアルバムや家電製品が置いてあります。小型のラジカセはきっと、湯治客向けに需要があるのかもしれません。これらの家電製品と並んで猫の置物などの手製小物が陳列しています。
「これは私が手作りしてるんだけどね、インターネットで紹介されて人気になってね…。
自らの手芸を活かして町の話題を作る奥さんの、穏やかな意気込みを感じました。過疎と産業の変化という大きな波が見えてくるのですが、その波を自らの手で、できるところから乗り越えていく姿がここにはありました。
駅から東鳴子の温泉街をしばらく歩きます。鳴子温泉とは異なり、温泉街とは思えない町並みです。小さな個人商店の間に旅館があるたたずまい。旅館も少し大きな民家と思えます。10分ほど歩くとコンビニエンスストア「サンクス」のまぶしい店舗と出会い、ここでつまみ代わりにと「酒田米菓のオランダせんべい」を購入。夕食は近くの焼肉店「八兆」でサワーを片手に何品か頼みます。いかにも温泉街といったけばけばしさはなく、自宅の近所の食堂に入ったような気分です。
いよいよ温泉に入ります。鳴子はさまざまな泉質の温泉が湧く場所で知られていますが、この旅館にもラジウム重曹泉、鉄鉱泉、重曹泉と3種類の源泉が湧き、体質に合わせて入り分けることができます。まずはラジウム重曹泉。こちらはぬるめでゆっくり浸かるのが入り方です。すでに何人かの爺さん婆さんが5人ほどだべりながら浸かっています。言わずと知れた「混浴」です。 隣の鉄鉱泉は少し熱めで、ラジウム重曹泉の後に入るといいとか。やはり鉄分を含んでいるためか、湯船が酸化鉄の赤錆色に染まっています。こうして温泉に浸かることで、半日を列車の移動で過ごし、疲れきった肩や腕の凝りをほぐしていきます。こうして、露天風呂を含め旅館内の3つの湯をめぐったわけです。 部屋に戻り、冷蔵庫に冷やしておいた活性原酒「雪っこ」を、テレビをみながらちびりちびり。甘味の強い、濃厚なテイストがたまりません。肴は柿の種、オランダせんべい、そして栗団子。栗団子は栗が一粒入った餅団子に甘いしょう油蜜がぼったりとかかっているもの。一口食べるとこれがまた甘い。追分団子の「みつ団子」のような味がしますが、さすがに一箱(8個入り)は食べられません。4個食べたところであまりの甘さにギブアップ。
テレビのニュースを見ていると、今日の15時頃、韓国や日本でコンピュータウイルスが発生し、インターネットに大量のデータが流れ、通信に障害が起きたとのこと。陸羽東線の車内からPHSでWebにアクセスして、いつまでたってもリプライが返ってこなかったのはこれが原因だったのか、と思いながら、只見線で出会った高校生に今日の行路を伝えてみます。数分後、
1時を回り床につくと、天井がぐるんぐるん回っています。この「雪っこ」、アルコール度数20.3度と日本酒の部類ではかなり高め。活性原酒で腹の中でも発酵が進むので、300mlとはいえ、口当たりのよさににまかせて飲んでしまうとこうした結果になります。名前の可愛さとは裏腹に恐るべし、雪っこ。「酒豪殺し」とはよく言ったものです。
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