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気分転換飲料BINTA(ビンタ)を飲む
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2003年7月、サントリーは「BINTA(ビンタ)」というとてもユニークな飲料を発売しました。
今回はこの「BINTA」にまつわる考察をしてまいります。

「BINTA」って…

BINTA(ビンタ)のラインナップ  「BINTA」はサントリーから発売された非炭酸の清涼飲料水です。6月中旬から東京地区で先行販売されたのち、7月1日からは全国発売が始まりました。「大人のちょっと刺激的な気分転換飲料」をキャッチフレーズに以下2種類のテイストがラインナップされています。

Refresh Dry リフレッシュドライ
Cool Menthol クールメンソール

 容量は350ml入りで、希望小売価格は160円と通常の清涼飲料水と較べて割高になっています。
 それではさっそく、この2つのテイストをそれぞれ口に含みながら、「BINTA」の特徴を述べていきたいと思います。まずは試飲です。

リフレッシュドライ

 ロゼのワインよりも赤みのある色をしています。
 一口含むと、グレープフルーツの果実を薄皮ごとかじった時のような、かすかな甘味と追いかぶさるように舌に強い苦味を感じます。イタリアのリキュール、カンパリが好きな方なら、そこそこ受け入れられるテイストと思われます。ちなみにカフェイン含有です。

クールメンソール

 スポーツドリンクを思わせる液体の色です。色から伝わるイメージもあって、一口飲んでみますとスポーツドリンクにミントを加えたような味覚です(かつてカルピスから「Air」というミント味のスポーツドリンクがありましたが…)。メンソールといっても激しくスースーと響くほどのクール感はなく、口中でかすかに広がって、そののち喉で余韻が残るミント感、といったものです。

 もう一口味わってみると、どうも「のど飴」や「うがい薬」を連想してしまいます。「ホールズ・オーシャンブルー」や「ヴィックス・コフドロップ」、あるいは「コルゲンうがい薬」の100倍希釈液…そう、うがいをしていて思わず口中の希釈液を飲み込んだときの「あっ、しまった」という感覚を思い出させてくれます。

BINTAの商品表示。クリックすると拡大画像を表示  2つのテイストとも、えぐみがあって薬っぽさを感じます。個人的には「リフレッシュドライ」を、グレープフルーツ果汁の風味と苦味が混じったテイストのユニークさという点で一票を投じたいと思います。
 いずれにしても飲むときには、1.よく冷やしてから飲む、2.少しずつ口に含む、3.苦い余韻を楽しむ余裕を持つ、の3点に気をつければ一本を空けられるかと思われます。また、いっぺんに飲み干そうとしないこともこの飲料を飲むときには忘れてはならない点です。

ノンアルコール飲料の延長

 続いて、「BINTA」のコンセプトを推測してまいります。
 この飲料、実験的要素がとても強く、さまざまなコンセプトが含まれていると感じますが、おもに次の3点が考えられるのではないでしょうか。

 まずは、「ノンアルコール飲料」の延長線上にこの飲料が位置づけられる点です。前回(2003年5月公開)の「不定期飲料リポート・カクテル炭酸ウォウを飲む」で、2002年の夏前後からノンアルコール飲料が流行り出して、現在に至っていることに触れましたが、この「BINTA」もカクテルのテイストを意識しているように思われます。

 しかし、「ノンアルコール飲料」や「カクテル風ソフトドリンク」と表向きには断言していません。ジャンルを限定しているわけではないようです。
 メーカーの商品紹介サイトを見ると、全国発売前に都内のカフェとレストランの各チェーン店試飲キャンペーンを行なったことが掲載されています。また、渋谷駅構内などでは試飲キャンペーンが実施されていることが確認されています。
 これらのキャンペーンは、この飲料が軽食やデザートと合うのか、あるいはディナーと合うのか、そのまま飲むのがいいのか…さまざまなシチュエーションでテストをしているとも受け取れます。

ちび飲みの刺激

 ふたつ目は、こうした刺激のある飲料と、少しずつ小分けに飲む「ちび飲み」という飲み方との関係です。
 軽い、割れない、持ち運びが容易…ペットボトルの利点は多々あります。中でも「自在に開閉できる」ことは飲む側にとっては最大のメリットです。

 容器の変化は、ライフスタイルに大きな影響を及ぼす、と言われていますが、ペットボトル飲料の登場は、「飲み残しを持ち運んで少しずつ飲む」という飲み方のスタイルを確立させたといえます。マスコミはこれを「ちび飲み」と呼びましたが、このネーミング、あまり定着していないようです。

 「BINTA」は、「ちび飲み」のスタイルに合うテイストを、という考えのもとで作られた飲料、ということもできるのではないでしょうか。一口で得られるインパクトや充足感を満たすためのテイストや、入れれば少しは口当たりがよくなったであろう炭酸を一切含んでいないことからコンセプトを見いだすことができるかもしれません。

対象は高い年齢層

 3番目は、対象年齢の高さです。
 おそらく20〜30代をターゲットにしているのではないでしょうか。概して甘味が少なかったり、苦味のある飲料は10代〜10代未満よりも高い年齢層を対象にしていることが多いようです。

 再びカルピスの商品を例に挙げて恐縮ですが、かつて発売されていた「B&L」(Bitter and Lemon)というソフトドリンクと「BINTA」の間に多少の共通点を感じます。苦味のあるテイスト、緑色の瓶にまるで外国産ビールを連想するラベル、そして力強いロゴタイプ…一瞬アルコール飲料を思わせる外観が大きな特徴でした。苦味がうまみであることが分かる年齢層をターゲットにしていることが容器からも理解できます。
 なお、この「B&L」は現在ではアルコール入りの酒類として発売されています。

 「BINTA」は「B&L」ほど極端ではないものの、クールなイメージのパッケージデザインは「若い大人」をターゲットにしているとも思われ、飲料のテイストは対象層をさらに明らかにしています。

おわりに〜ターゲットは少数派〜

 販売促進キャンペーンで配布されていたリーフレットにこのようなコピーが載っています。
  「10人に3人が、クセになる。」
 従来ならば「10人に7人が」受け入れる飲料をつくることが主流だったわけですが、嗜好が多様化する中では、より刺激的なもの、より他の飲料とは異なるものをつくるベクトルが存在してもおかしくはありません。

 「万人に受ける飲料」ではなく「賛否が分かれる飲料」、「一部の人に受ける飲料」…。今まで少数派として切り捨てられていた層を掘り起こすために、さまざまな試みが進められていることが分かります。それほど潜在的なニーズを見つけていくことが手探り状態であることを物語っているのですが…。
 「BINTA」の試みは今後、どのようなスタイルの飲料をつくり出していくのでしょうか。

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