STIJ Project Logo -
-
- STIJ News 現代飲料考 月刊 看板
巷の風景 My Trip私の旅 STIJ Projectについて 近隣諸網
トップページへ 現代風景研究会のBlogへ -
  関連ページ
STIJ News
イチ押し ダメ出し目次
きょうのことば
巷の風景
商品発送に最適
ネットショップ・オークション発送をオリジナルパッケージにすれば、宣伝効果が上がります。
調達しづらい段ボール、緩衝材探しは通販で。

最近のイチ押し ダメ出し 1097

 郵政民営化議論に水を差す(3)〜最悪のシナリオ〜

04月07日

政府骨子をみる

 都心でも桜が開花し始めた4月4日、政府は郵政民営化に関する法案の骨子をまとめました。
 まずは朝日新聞4月5日朝刊の記事から要点を改めて整理してみます。

1.現在、郵便、貯金、保険と三事業で経営している郵政公社を、郵便会社、貯金会社、保険会社、窓口会社とこれら4企業の持ち株会社に分割する。

2.持ち株会社は郵便会社、窓口会社の株式を100%保有。貯金会社と保険会社の株式は2017年までに完全売却を行なう。但し、4社間の持ちあいは可能にする。
(※註:2017年は政府保証のある定期定額貯金(旧勘定)の消滅年)

3.民営化スタート時期は2007年4月。システム整備に時間がかかる場合は、10月まで延長する。

4.国家公務員の身分を持つ職員(給与は税金から支払われていない)は、民間人に。
 但し、特定郵便局長や裁判関連の書類を扱う職員などは公的資格を与える。

5.現在、法律によって郵便局の全国配置を義務付けている点は、「全国で利用できるような配置を義務づける」とする。

6.敵対的買収への防衛策をはかる。

7.民営化後の会社が払う税金は、固定資産税は減免、消費税は減免しない。

 ここで掲げられた「骨子」とは、読んで字のごとく会社の「骨組み」であって、利用者に直接影響する具体的な「肉」が見えていません。これらのニュースを読み聞きして「分かりづらいなあ」と思うのは、郵便局の利用者であるわれわれと、この骨子との接点が今ひとつ見出せないからだろうと思います。

まったく参考にならないバブル時代の成功例

イメージ  それでは政府は「肉」をまったく見せていないか、と言うとそうではありません。
 手元に内閣官房郵政民営化準備室がわれわれの税金をふんだんに使って作成した「−郵政民営化の基本方針−だから、いま民営化」という冊子があります。
この冊子を読むと、民営化されたJR、NTT、JTを引き合いに出し、民営化当初から2003年までの間に、運賃は5%上がっただけ(JR)、通話料は5分の1になった(NTT)、多角化によって売上が1300倍になった(JT)、3社とも生産性が大幅に向上した、と図で示されています。

 確かに数字ではそうでしょう。しかし数字の出所を見てみると、JRの運賃が「5%上がっただけ」というのはJR東日本、JR東海、JR西日本の本州3社だけということに気づきます。JR北海道、JR四国、JR九州は8.6%から9.7%の値上げが実施されています。
 NTTにしても、ダイヤル通話料は確かに値下げしましたが、これは携帯電話事業やプロバイダ事業、そして他社からNTT電話網に乗り入れるための接続料などの収入があるからです。現に接続料は大幅な値上げが実施されています。

 また、売上が上がったのは、バブルの時代に携帯電話の基地局や製薬プラントなど莫大な設備投資をしたからですし、生産性の向上についても、ITの導入により合理化、効率化が可能になっただけでなく、多くの職員を関連企業に出向させたり、早期退職を募って人員を整理したからです。

 バブルの異常な時代に体力をつけて放出した事例を出されても、この財政難と不景気、労働力人口の減少したいまの時代に同じことができるかという疑問を消し去ることはできません。むしろ、バブル時代の成功例などまったく参考になりません。

 民営化されたからといって、はがきや手紙が安くなるわけではないのです。

お先真っ暗な事業運営

 同じことを郵政がやったらどうなるでしょうか。
 郵政事業は通勤で電車に乗る、家族に電話をかける、病気の治療で薬を飲むなどの「必要に駆られて利用せざるを得ない」ような存在ではありません。手紙を書くなら電子メールがありますし、荷物を出すなら運送会社があります。さらにお金を預けるなら銀行や信用金庫がありますし、保険に入りたければたくさんの保険会社が多様な商品を用意しています。政府自ら「郵政事業は将来的に先細りする」と言っているくらいです。
 現在、唯一「信書」が「必要に駆られて利用せざるを得ない」状態に制度上ありますが、これも民営化されれば信書事業に参入してくる会社は増えてきます。
 すなわち、選択可能性が高く、独占性を維持することが困難なのが郵政事業であり、独占性を保持したままその独占性によって収益を確保している既存の民営化会社とはまったく性格が異なるものです。

 しかし、さきの考え方は都市に住む人間が自分の身のまわりの環境だけを見ての発想です。地方過疎地へ行くと話が全く異なります。通信手段や荷物の発送手段の選択幅が狭く、金融においては選択肢がない場所もあります。
 地方の金融機関や保険会社といえば農協(JA)や漁協が代表例に挙がりますが、運営の効率化から統廃合が進む現在、地方過疎地では郵便局ほど独占性が保持されている場所はありません。いや、「全国あまねく公平」という大前提があるからこそ、他社が参入できない場所やどんなに赤字でも、三事業による黒字部分で補いながら辛うじて維持しているのが現状です。

 JRには赤字ローカル線の維持義務はありません。採算が取れなければ路線を廃止することができます。NTTも利用率の悪い公衆電話や電話局を廃止することができます。こうして不採算部門を削減し収益を確保するのは企業の基本です。
 ところが郵政事業の場合、骨子5.のとおり郵便局の配置義務が課せられています。これだけを読むと、以前と同様、どんなに赤字が出てもそれを背負って経営しろ、と言っているようにも聞こえますが、違います。「全国で利用できるような配置」ですから、一つの県に設置されているすべての郵便局が消えない限り、不採算部門を削減しても何ら問題はないわけです。
 意図的にあけられた「穴」によって、地方過疎地や赤字経営の郵便局は消えていくのは確実です。

 それでは「穴」を埋めれて「現存の郵便局をすべて配置する義務」を課せば解決するかといえばそうではありません。
 地方過疎地の赤字窓口支点を維持させる、自由競争の名の元に新規参入を促す、あるいは第三セクターで維持させるとすれば、必ず出てくるであろう「補助金」や「助成金」によってわれわれの税金が拠出される可能性が出てきます。

 現在、郵政三事業の職員給与や運営経費に税金は一銭も使われていません。4会社に分割したがために使わなくても良かった税金が拠出されてしまうならば、本末転倒です。

 また、郵便会社が国際物流事業に参入する、貯金会社が株式の販売や消費者ローンを始める、保険会社が死亡保険金1億円の商品を売る、窓口会社が映画のチケットやおにぎりを売る…などを行なっても、すでに他社が同様の事業を行なっているわけですし、他社が持つノウハウは膨大ですから、勝負は始める前から見えているようなものです。
 さらにこれらの事業は国内の企業だけでなく、外国企業も参入していますから、ヘタをすれば一気に外国企業にM&A(企業合併・買収)されてしまう可能性もあります。
 もし、地の利を活かして新規事業で成功したとしても、今度は他社の事業が確実に圧迫されるわけで、政府から「あっち行け」と言われて放り出させた存在は、民間企業からも「あっち行け」と言われる存在になってしまうわけです。

 それを知ってか知らずか、政府案骨子の2.6.で民営化会社間で株式を持ち合いできたり、買収されないための策を盛り込みましたが、最悪な場合、これら会社の株式は市場公開されないまま互いに持ち合ってしまうことになってしまいます。
 果たして「健全な市場の活性化」は実現できるのでしょうか。

偽られた明るい未来

 「だから、いま民営化」の冊子には、「郵便局はもっと便利に」、「ご心配は無用です」、「改革なくして成長なし」という決まり文句が並べられていますが、こうした宣伝を見ると、「ほら、こんなに成功している人がいるよ。あなたもやれば成功するよ」などと言って販売員やフランチャイズに加入させるたちの悪いマルチ商法の口説き文句を私は連想してしまいます。ほとんどの場合、こうした販売員やフランチャイズは赤字を抱えた上に事業に失敗するのが現状です。
 これは真の「明るい未来」ではなく、「偽られた明るい未来」に過ぎません。

 郵便貯金、簡易保険の350兆円を天下り特殊法人に流れ込まないように「元栓を閉める」目的で行なうといわれる民営化。元栓を締めたはずなのに「ガス漏れ」をしていて、気づかず電気のスイッチをひねったら引火して爆発、などということにはなって欲しくありません。

 この問題、ない頭で考えてもまだまだ語り切れないことがあります。続きは機会を改めて書かせていただきます。

山積している問題

暗闇からのエクソダス
 ・貯金会社や保険会社が国債引受を断ったらor国債を放出したら…
 ・貯金会社は誰にカネを貸す?
 ・郵便線路という無形財産
 ・他社との提携強化は吉か凶か?
 ・見えない個人の顔と公共性
  etc...

関連ページ

郵政民営化議論に水を差す(4)〜「こんな程度」の温度差〜
郵政民営化議論に水を差す(2)〜真の敵は誰?〜
郵政民営化議論に水を差す(1)〜民営化≠自由競争〜

関連サイト

「あすなろ村の惨劇〜そして誰もいなくなった〜」(民主党作成)

郵政事業に関するムダ知識

・郵便局非常勤職員の社会保険制度…郵政の現場では正職員約27万、短時間職員約5千人に加えて、約11万人の「ゆうメイト」と呼ばれる非常勤職員がいる。
非常勤職員は郵便物の区分、配達や窓口業務などの業務領域で配置されており、公社全職員の3割を占める。非常勤職員は国家公務員共済組合に加入しておらず、厚生年金と政府管掌健康保険が適用されている。さらに年賀はがきや通販商品の販売などの営業ノルマまで課せられているという。
・郵便物数減少のカラクリ…第1種〜第4種の物数は確かに減少しているが、その一方で冊子小包が前年度の200%増になっている。法律のしばりがゆるい冊子小包では大口割引制度を敷いており、これ利用すると定形郵便物の料金に近い金額で発送できるため。従来、通常郵便で送付していたカード類やカタログが次々に冊子小包として送られている現状がある。
・また、民間業者は利益の小さいカタログ類を発送代行だけ行ない、採算の合わない配達部分は郵政に丸投げしている。民業圧迫どころか民業支援である。
・郵便局の入口にある「〒」マークの電照看板の発売価格は約7万円。
・携帯電話の電池ボックスを開けると製造番号などの標記とともに「〒」マークをデザインした記号を見ることができる。
これは電気通信端末機器審査協会の認定マークで、かつては郵政省の認可法人だった。もちろん役員の元職は普通郵便局長と郵政省キャリア組の天…
・ちなみに「〒」マークは日本郵政公社がすでに商標登録している。
・新聞社は旧郵政省が「タウンメール」を導入したときに猛反発したことがある。
 新聞業界は折込チラシの広告収入減を危惧し、戸別配達にビジネスチャンスを見出そうとしている。その一方で低料金で発送できる第三種郵便の廃止には反対している。大手新聞社の論調には要注意。
・アメリカでは受け箱(配達ポスト)にアクセス権が設定されている。郵便物以外の物を入れると罰則対象になる規程まで定めている。アメリカは自己の利益に不都合なことは絶対にやらない。日本はいつまで尻拭いをさせられのるか。

dummy

[STIJ News] [月刊看板] [現代飲料考] [巷の風景] [My Trip]
[Stij Projectについて] [近隣諸網] [Blog] [to Toppage]
当サイト掲載の文書・画像・音声等の無断転載を禁じます。
dummy
dummy