夏が来れば思い出すのは、蚊取り線香の香りと、手持ち花火の火薬の香り、そしてカルピスの味である。
子供の頃、カルピスの瓶はとても大きく、重く感じた。グラスに濃縮液体を注ぐだけでも一仕事だった。しかし、ひと仕事を終えた後に飲んだ甘酸っぱい味は今でも忘れることはできない。最近、カルピスウォーターなどというものも出ているが、やはり、「自分のお気に入りの味」に調合できること、自分で飲み物をつくるという楽しみはいつになっても失いたくないと思う。
ビタカルピスは、通常よりもビタミンが強化されたものということであろうが、現存していないので詳細は不明。カルピスのキャラクターも黒人を連想して差別的など様々な問題があり、いまでは姿を消している。私はずっとあのキャラクターは「黒猫」だと思っていたのだが…。
夏の昼下がり。木陰の下に白いテーブルを置いて、二人で飲むカルピスの味はまさに「初恋の味」〜というのは空想世界の話。蒸し暑い一室で、錆臭い水道水でカルピスを薄めるのが日常だろう。
看板データ:長野県松本市深志町、1989年