新堀ギターは横浜の磯子を拠点とする音楽学校の一つ。ギター教室は関東一円に約30箇所開設されている。また、系列の専門学校も存在する。詳細は新堀ギターホームページを見ていただくとして、ここでは関東地方の街中に見られる「新堀ギター看板」を例にとり、TOTANの表記・表現方法について考えてみたいと思う。
看板の表記には一種のスタイルがあり、基本的には
- 社名・商品名
- キャッチコピー
- 説明文
- 所在地・電話番号
から構成される。当たり前といっては当たり前なのだが、このスタイルをどう配置するかで受け手の印象が大きく異なってくる。そのためには色彩、フォント、キャッチコピーの文面などひとつひとつのパーツに気を配りつつ、一枚の看板を作成することが求められる。
数多くあるTOTANの中でも、この新堀ギターはデザイン、特にタイポグラフィーに特徴があり私たちに大きなインパクトを与えてくれる。
全体的に1970年代チックで、この看板を眺めているとふと脳裏からフランク・ミルズの「スパニッシュ コーヒー」が聞こえてきて、われわれを30年前の世界にタイムスリップさせてくれる。
そんな魅力を持った看板である。
それでは、この新堀ギター看板を考察してみよう(上の写真の丸付き数字をクリックすると、その該当箇所に進むことができます。ちなみに、このページは看板のことのみを取り上げています。新堀ギターの内容については言及していません)。
〜1:ロゴタイプ・その1〜
大学の全学自治会委員が立て看板で書くような書体(「トロ字」というらしい)に似たタイポグラフィが特徴的である。
1960年代中期から1970年代後半にかけて、大学構内のいたる場所で掲げられていた「安保阻止」、「6.19斗争に勝利しよう」などのアレである。最近はこの手の看板もすっかり見かけない。多くの学生が運動から離れ、社会よりも自分と半径数メーターのヒトやモノにしか関心を持たなくなったこと、そしてこのタイポグラフィを書ける人がいなくなったことなどが理由だという。この裾を広げたようなタイポグラフィは「ベルボトム系」と分類されるだろう。ベルボトムのジーンズ、パンタロンがそうであったように、「裾を広げる」というのはある種「反権力・反体制」の象徴があるのかもしれない(…と結論づける学者先生とか新聞記者とか多いですね)。
〜2:キャッチコピー〜
「うるおい、あなたにプレゼント」。すなわち、音楽を通じて心の潤いを持たせてあげますよ、という意味であるが、別に善意ではなく、「それに相当する金銭を払った場合のみに許される」もの。いわば「チェルシー、あなたにも、あげちゃい」と同意義である(意味不明)。
〜3:ロゴタイプ・その3〜
これがなければ新堀ギター看板も「ただの看板」である。この字を見ると身体の奥から武者震いを感じる方も多いはず。
「新堀」と同じ書体だが、こちらの「ギター」の方が一度見たら忘れないほどにインパクトがある。「ギ」の濁点が後方にまわっているところにさりげなさを感じる。
〜4:説明文〜
学校にはある意味の「権威」がなければ人を教育することができないが、それを裏付けるのがこれ。確かに「凄い」と思う。そう思わせなければ広告である以前に、学校として成立しない。なお、「凄い」を表現するのは「国際」、「芸術」、「受賞」よりもむしろ「メソード」ということばである。
〜5:所在位置表示〜
これは看板の掲示地域によって変わる部分。最近、大都市の市外局番桁数が変更されているので、この部分を見れば同じTOTANでも作成時期が推定できる。この所在位置表示こそ、TOTANの広告戦略である「地域密着型広告」を大きく特徴づけるものとなっている。
〜関連ページ〜
新堀ギターのWebサイト http://www.niibori.com/
このサイトを見れば、新堀ギターの全てがわかります。