1981年1月1日
地方に親戚のいない筆者にとって、正月というものが何とも暇苦しくて仕方ありません。当時は元旦や2日から開店する店は皆無に等しく、かといって遊ぶところもなく、家族揃って外出するでもなく、結局朝からテレビ漬けを強いられたため、ただただ暇で退屈な時間を過ごす、という記憶しか残っていません。
「正月とクリスマスはどうも性に合わない」と思うようになって十数年が経ちますが、現在でも正月番組特有の、あのおちゃらけた雰囲気が好きにはなれません。年末に貯め撮りした録画番組で、羽織袴を着て『あけましておめでとうございます』を演じるウソ臭さにあきれ、初詣と帰省Uターンラッシュの情報しか流さないニュースにうんざりしながらチャンネルを切り替えれば、延々と走る姿しか映し出さない「実業団駅伝」と「箱根駅伝」、ダメ押しに切り替えれば「12時間連続ドラマ」…。こんな番組ばかり見ていたら、日本の国はどうにかなってしまうのではないかという(すでになっているという声もある)「危機感」が筆者に襲いかかってきます。
そんなうんざりする正月のテレビですが、「これを見なければ、聞かなければ正月を迎えた気がしない」というものが一つだけありました。高級眼鏡店として銀座などに店舗を置く金鳳堂のCMがそれです。
ひたすら
♪メガネの 金鳳堂〜
を15秒間繰り返すだけのコマーシャルソングですが、筆者はこれを聞くとそこはかとなく新年の訪れを感じました。金鳳堂のCMは正月の数日間に、フジテレビでしか流れないレアな関東地区ローカルCMでした。
このCMを正月だけしか流さないことを知ったのはかれこれ15年くらい前になりますが、CMソングだけは幼年期を過ごした1980年代の初頭頃から耳にしていました。正月しか流れないCMならば、「明光商会のMSシュレッダー」や「鈴廣のかまぼこ」(いずれも関東ローカル)などがありますが、混声合唱で
♪メガネの 金鳳堂〜
と歌うところ、歌の最後で合唱団のひとりが音の調子を外すところにインパクトを覚えたのかもしれません。
金鳳堂のCMは1990年以降から目にしなくなりました。おりしもバブルで広告料金が上がったのが原因なのか、その理由は定かではありませんが、あのCMソングを聞かなくなってからますます正月が性に合わないものになってきました。
(今回は残念ながら音声がありません)